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[P69-04] 心エコーで心房内隔壁をみとめた兄弟例 ~先天性左心耳入口部狭窄と三心房心の発生学的共通性について~
キーワード:左心耳、三心房心、発生
【はじめに】左心耳入口部狭窄(left atrial appendage ostial stenosis)は一般的に左心耳結紮術後の後遺症として知られており,特発性はまれである.従来の報告はすべて成人例であり,他疾患の精査中に偶然経食道心エコー等で発見されることが多い.【症例】3か月男児.在胎40週5日に吸引分娩で仮死なく出生した.胎児不整脈の既往あり,生後3か月時に精査目的で近医を受診した.経胸壁心エコー(TTE)で左房内に乱流をみとめ,肺静脈狭窄の疑いで当科に紹介された.当科初診時発達および発育は正常であり,心雑音は聴取されなかった.TTEで左房内に2.9mmの膜様狭窄および同部位での乱流をみとめた(2.9m/s).児の兄が1歳時に三心房心(Type I)の診断で心内修復術を施行されており,本症例も三心房心と暫定診断したが,胸部造影CTでは三心房心は否定的だった.更なる精査のため心臓カテーテル検査を施行したところ,左心耳造影で左心耳入口部の狭窄をみとめた.左心耳‐左房間の圧較差は27mmHgであった.本症例は心臓手術や心筋炎などの既往がないこと,また生後3か月という早期乳児例であることを考慮し,特発性(先天性)左心耳入口部狭窄と診断した.本症例は出生後不整脈や血栓症などみとめられず,現在無投薬で経過観察中である.【考察】我々の検索した範囲では,本症例は先天性左心耳入口部狭窄の初の乳児例である.先天性左心耳入口部狭窄は以前から三心房心との発生学的異同が議論されてきたが,いまだ結論は出ていない.今回わたしたちが経験した先天性左心耳入口部狭窄と三心房心の兄弟例は,両者の発生学的共通性を示唆する重要な症例であると考えた.また,本症例においてはその疾患概念を我々が認識していれば,診断目的の心臓カテーテル検査は不要であった.非常に希であるが重要な本疾患概念について,小児循環器科医は認識しておく必要がある.