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[P69-05] 門脈体循環シャント結紮術が奏功した重度肝内外門脈低形成の一女児例
キーワード:門脈体循環シャント、門脈低形成、肺高血圧
門脈体循環シャントは肝内外門低形成のために門脈から体静脈へのシャント血管が発達し、肺高血圧含め様々な病態を引き起こす。肝内門脈未発達症例に対して肝移植が第一選択となるが、近年 未発達症例においてもシャント血管閉鎖試験で門脈圧が32mmHg未満であれば一期的、32mmHg以上であれば二期的シャント血管閉鎖を行なうことで肝内外門脈発達が促されるという報告が発表された。今回我々は肝内外門脈重度低形成症例に対してシャント結紮術を行い肝移植回避可能であった症例を経験した。 症例は2歳女児。出生後、部分肺静脈還流異常、心房中隔欠損、下大静脈欠損、半奇静脈左上大静脈接合、門脈低形成、門脈体循環シャント、腸回転異常と診断。出生後から中等度肺高血圧が遷延しため部分肺静脈還流異常、心房中隔欠損に対して生後3ヶ月時に根治術施行。その後も肺高血圧は遷延し、また左右肺動静脈瘻中等度と低酸素血症(SpO2 70%台 (Room Air))を認めたために門脈体循環シャント血管結紮術または肝移植の適応と考えた。シャント血管閉鎖試験では門脈圧が10から24.5mmHgと上昇した。当院では閉鎖試験後門脈圧が20mmHg以上であれば肝移植適応であったが、前述する報告を参考にシャント結紮術を行うこととした。術中門脈圧は結紮後10から24mmHgの上昇であり一期的結紮を行った。術後、浮腫や腹水など大きな合併症は認めず、術後4ヶ月時の造影CTでは肝内外門脈発達が著明で、エコーでも十分な門脈血流を認めた。また術後7ヶ月後のカテーテル検査で平均肺動脈圧は22mHgとなり、術前の34mmHgから有意に低下、肺内シャントもほぼ消失した。 本症例の経験から、肝内外門脈重度未発達症例においてもシャント結紮により十分な門脈発達が促され、肺高血圧含めた合併症も劇的に改善する可能性が高いことが示された。