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[P73-02] 冠動脈移植を工夫した左冠動脈肺動脈起始症の乳児例
キーワード:左冠動脈肺動脈起始症、冠動脈移植、bay window法
【背景】左冠動脈肺動脈起始症(ALCAPA)は、乳児期早期から心筋虚血による心不全が出現する疾患である。手術方法としてdirect aortic implantation、Takeuchi operation、spiral法、冠動脈バイパス術など種々の報告がある。今回、左冠動脈主幹部(LMT)が非常に短いALCAPA症例に対し、冠動脈移植を工夫したので報告する。【症例】1か月女児 体重。在胎39週0日、2476gで出生、周産期経過は問題なく、発熱、哺乳不良、咳嗽を主訴に近医受診した。RSウイルス抗原検査陽性ならびに心エコー検査にて、心機能低下、高度僧帽弁閉鎖不全(MR)を認め、当院紹介となった。入院時、多呼吸、頻脈、浮腫などの心不全症状を呈しており、内科的治療にて改善するも、心エコー検査にてALCAPAと診断、心臓カテーテル検査、CT検査にてLMTは肺動脈の左後方洞から起始するが、LMTは非常に短いことが確認できた。状態は安定したため、RSウイルス抗原検査陰性を確認し手術を施行した。術中所見では、冠動脈開口部は、主肺動脈後方洞のやや左側から起始しており、LMTは非常に短く大動脈壁からすこし距離があった。Punch out法での冠動脈移植ではねじれや伸展のriskが高いとことも予想されたため、肺動脈本幹から大きめのcoronary cuffを採取後、LMTをできるだけ剥離し、冠動脈ボタン上方を覆い被せるように折りたたんで冠動脈開口部にスペースを作成できるbay-window法を併用することで、冠動脈移植後の左冠動脈血流を維持できた。またMRに対する外科治療は行わなかったが、術後早期からMRは消失した。【結語】LMTが非常に短いALCAPA症例に対し、冠動脈移植術としてbay window法を施行し、術後の冠血流不全を予防できた。