第52回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

会長賞選別講演

会長賞選別講演(PAL)

2016年7月6日(水) 17:15 〜 18:00 第D会場 (オーロラ イースト)

座長:
安河内 聰(長野県立こども病院 循環器センター)
小川 俊一(日本医科大学)

PAL-01

17:15 〜 18:00

[PAL-03[II-OR111-07] ] 小児単心室症に対する心筋再生医療における治療反応予測因子の検討と5年間に及ぶ長期追跡調査報告

石神 修大1, 後藤 拓弥1, 逢坂 大樹1, 大月 審一2, 笠原 真悟1, 佐野 俊二1, 王 英正3 (1.岡山大学 心臓血管外科, 2.岡山大学 小児科, 3.岡山大学病院新医療開発研究センター 再生医療部)

キーワード:小児心不全、心筋再生医療、心臓内幹細胞移植

【背景と目的】岡山大学病院では小児単心室症に対する心臓内幹細胞自家移植療法の臨床研究を行っており、これまでに41名の患児に細胞移植を行った。今回の研究目的は、心機能改善に寄与する因子の検討と最長で移植後5年に及ぶ追跡調査による安全性と治療有効性を確認する。【方法】2011年1月から第1相臨床研究(TICAP試験、移植7症例)、2013年4月から第2相臨床研究(PERSEUS試験、移植34症例)を実施開始した。手術時に右心房よりcardiosphere由来幹細胞を分離培養し、手術後に体重あたり30万個の幹細胞を冠動脈内に注入した。移植後3ヶ月を主要エンドポイント、1年後を副次エンドポイントとして評価を行い、以降5年目まで遠隔期追跡調査を行った。【結果】全移植症例41例の移植1年目における心臓MRIでは、心駆出率が移植前に比し有意に改善し(P<0.001)、また、心不全症状(Ross score, NYUPHF index)の軽減とQOLの有意な改善も確認した。重回帰分析で検討した細胞移植に伴う心駆出率の改善度に寄与する因子として、移植時の心駆出率が治療反応性の予測因子として考えられた(P=0.002)。さらに、第1相臨床研究での移植後平均4年に及ぶ長期追跡調査では、改善した心駆出率は保持されており(P<0.001)、心不全の再発も認めず、最長移植後5年経過した症例においても腫瘍形成を認めなかった。【結語】岡山大学病院ではこれまでに左心低形成症候群を含む単心室症患者41例に対し安全に心臓内幹細胞自家移植療法を実施し、全観察期間中において移植症例における心駆出率の有意な改善を認めた。治療反応例の予測には移植前の心駆出率が規定因子として考えられた。今後小児心不全に対する心筋再生医療の薬事法承認に向けた多施設共同の第3相企業主導臨床治験が開始予定であり、本細胞治療法の標準医療化を目指す。