第52回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

外科卒業後教育ビデオセッション

外科卒業後教育ビデオセッション(SEV)
ファロー四徴症の外科治療(新生児から成人まで)

2016年7月8日(金) 15:10 〜 17:40 第B会場 (天空 センター)

座長:
安藤 誠(榊原記念病院 小児心臓血管外科)
笠原 真悟(岡山大学医歯薬学総合研究科 高齢社会医療・介護機器研究推進講座 心臓血管外科)

SEV-01~SEV-08

15:10 〜 17:40

[SEV-04] 外科卒業後教育ビデオセッション
ファロー四徴症の外科治療(新生児から成人まで)

平松 祐司 (筑波大学 医学医療系 心臓血管外科学)

【背景】TOF遠隔期のPR回避のために、transannular repairに代わるvalve-sparing技術が模索されている。ここでは既存のvalve-sparing法を網羅するとともに、われわれが提案する新しいvalve-sparing手技;pulmonary cusp and annular extension technique (ATS 2014;98:1850)を供覧する。【方法】術前経胸壁エコーで肺動脈弁および弁輪のコンディションを綿密に評価する。弁輪のZ-score -3.0以内で弁尖が過度にdysplasticでなければ本術式を考慮する。2尖弁でも3尖弁でもよいが、交連部のtethering機能を損なわないよう注意しながら十分に交連切開する。主肺動脈縦切開を前方弁尖の弁腹中央まで下ろし、そのまま弁輪と弁腹を切開して10-15mm程度の右室切開を置く。肺動脈弁のcoaptation zoneと交連部tethering機能は温存されていることになる。前尖弁腹楔状切開部に楕円形のGA処理自己心膜片先端をあてて前方弁尖を拡大し、この心膜片の横幅(約15mm)で弁輪切開部を拡大しながら頭側に翻転し主肺動脈を補填する。残る右室小切開部には0.4mm ePTFEパッチをあて、この上縁をGA心膜パッチの水平折り返し線に縫着することによって弁輪を補強する。【結果】本術式を4例(7.8-9.3 kg、生後10-16ヶ月、BTS先行2例、最長観察62ヶ月)のTOFに適用した。2尖形態が3例、3尖形態が1例で、弁輪径は-2.3~-3.1 SDであった。最長観察期間62ヶ月の中で、RVOT圧較差は10-22mmHg、PRはII度以下である。肺動脈弁輪は体格相応に成長し、RVOT形態は良好である【考察】他のvalve-sparing法としては、1) 交連切開と術中ブジー/バルーン拡大法、2) Sungのcuspパッチ拡大法、3) Yangのbiorifice法、4) UstunsoyのV-plasty法がある。1) はmild PSに限ったvalve-sparing法。2) は弁尖のcoaptationとsuspension機能に介入し、長期耐用性に不安がある。3) はPR出現の懸念が大きく、4) はわれわれの方法に似るがデザインが異なる。本術式は肺動脈弁の生理的coaptation/tetheringメカニズムの温存と弁輪拡大を両立し、RVOTは良好な機能を保ちつつ成長し得る。但し、初期の弁口面積は交連切開の達成度に依存し、GA心膜による弁尖形成は著しい委縮弁尖や狭小弁輪においては困難である。【結論】本術式は従来のtransannular repairに完全にとって代わり得るものではないが、修復遠隔期の肺動脈弁機能温存を図るオプションとして、TOFにおけるvalve-sparing法の適応拡大に寄与する可能性がある。