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[YB03-05] 出生前グルココルチコイド投与によるラット胎仔心筋細胞増殖とAkt-GSK-3β-β-catenin pathwayの関与
Keywords:細胞増殖、グルココルチコイド、Akt
【背景・目的】早産児に対する出生前の母体グルココルチコイド(GC)投与は胎児肺サーファクタントを増加させ呼吸不全を予防することが知られている。以前より我々は、妊娠ラットに対する出生前GC投与が胎仔ラットの心筋エネルギーの増大やカルシウム調節機構の発達に貢献し、胎仔心筋断面積の増加に関与している事を示してきた。しかし断面積増加の機序が心筋細胞増殖と心筋細胞肥大のどちらに起因するかは不明であったため心筋の組織学的評価、細胞増殖マーカーであるKi-67、c-myc、MTS法を用いて検証を行った。また、その分子メカニズムも不明であり、Akt-1、GSK-3β、β-cateninの発現に影響するか検証した。【方法】 妊娠ラットにデキサメサゾン(DEX)を出生前2日間皮下投与し、妊娠19日目、21日目に帝王切開し早産胎仔の心臓を摘出した。また自然分娩した日齢1の新生仔から同様に心臓を摘出した。非投与群として同量のごま油を投与した。それぞれの群から摘出した心筋組織を組織HE染色し組織学評価、細胞密度の評価を行った。また免疫組織染色法で細胞増殖マーカーであるKi-67、in vitroでc-myc mRNA、MTS法を施行し細胞増殖能を評価した。また免疫組織染色、心筋から蛋白抽出を行いウエスタンブロッド法でAkt-1、GSK-3β、β-cateninの蛋白発現量を比較した。【結果・考察】 出生前GC投与により胎仔心筋における心筋細胞では明らかに筋線維の増加を認めたが、心筋細胞密度に変化は認めなかった。GC投与群における免疫組織染色ではKi-67の有意な増加を認め、in vitroでc-mycは有意に増加し、MTS法でも細胞増殖が有意に増加した。またGC投与によりAkt-1とβ-cateninの有意な増加とGSK-3βの有意な低下を示した。これらの結果から妊娠ラットに対するGC投与による胎仔心筋断面積の増加は心筋細胞増殖に起因している事を証明し、心筋細胞増殖にAkt- GSK-3β- β-catenin pathwayが関与していることが示唆された。