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[YB07-03] PA/VSDの術後に膵体尾部欠損による糖尿病を発症し、GATA6遺伝子変異(R456C)を認めた1例
キーワード:GATA6、膵体尾部欠損、多脾症候群
【はじめに】GATA6は転写因子のひとつで、TOF、PTAなど先天性心疾患 (CHD) 患者における心臓流出路形成や膵形成異常の原因遺伝子として報告されている。しかし現在、GATA6遺伝子変異を伴うCHDと膵形成異常との合併報告は少なく、検索した限り、本邦では2家系のみであった。本例は、PA/VSDの術後経過観察中に糖尿病の発症を契機に膵体尾部欠損が判明し、GATA6変異を認めたので報告する。【症例】10歳男児。PA/VSDに対し1歳時にRastelli手術、10歳で再手術を施行した。両側SVC、左鼠径ヘルニア、左停留精巣を認めた。今回、気管支喘息に対してプレドニゾロンが処方され、3日後(入院11日前)から口渇・多飲・多尿が出現した。定期受診時に尿糖 4+、血糖584 mg/dl、HbA1c 11.5%と上昇あり、糖尿病の診断で緊急入院した。インスリン治療開始後から徐々に血糖値は低下し、漸減中止できた。抗インスリン、抗GAD、抗IA2抗体は陰性、腹部CTで膵体尾部欠損が判明し糖尿病の原因と判断した。また、分葉脾、胆嚢欠損も合併し、GATA6遺伝子にDe novoのヘテロ接合体変異(R456C)を認めた。【考察】GATA6の変異は複数報告されているが、CHDと膵形成異常の両方を認めるもの、どちらか一方のものがあり、変異部位と表現型との関連は不明な部分も多い。また、膵無形成と違い、膵体尾部欠損の約半数は糖尿病を発症しないとされ、GATA6変異が確認された糖尿病非合併のCHD患者にも膵体尾部欠損の合併が考えられる。さらに、本例は多脾症候群と診断できる症例でもあった。膵体尾部欠損と多脾症候群の合併報告が複数あり、GATA6変異の表現型が多脾症候群に類似していることから、本例は、GATA6変異の表現型を明らかにするだけでなく、多脾症候群への関与を検討していく上でも重要な症例と考えられた。