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[YB10-02] 姑息手術を要するEbstein奇形の外科治療戦略
キーワード:Ebstein奇形、姑息術、Starnes手術
【目的】初回手術として姑息術を施行したEbstein奇形症例の遠隔成績を検討。【対象と方法】1984年から2013年までに姑息手術介入をおこなった16例。男性8例、女性8例で初回手術時年齢は日齢1から11歳(中央値3.6ヶ月)。合併心奇形は心房中隔欠損症 (ASD)12例、卵円孔開存(PFO)2例、心室中隔欠損症 (VSD) 2例、肺動脈閉鎖 (PA) 7例、肺動脈弁狭窄 (PS) 2例、大動脈縮窄 (CoA) 1例であった。初回術式はSCF+PAB: 1, Brock±BT: 2, BT: 10, Starnes: 2, PTA: 1で、計31回の姑息手術介入を施行。【結果】病院死亡2例(12.5%)。1例はBVR目的にて開胸後、術中計測で根治不能と判断され中止となったが低酸素状態が持続しBTを施行したがPOD1に死亡。他の1例は術後3ヶ月目に敗血症にて失った。遠隔死亡1例(6.3%、BVR後5年目に突然死)。Kaplan-Meier法による累積生存率は5年87.1%、10年87.1%、20年76.2%。BVR到達4例、Fontan手術到達5例、BDG1例、BTのまま4例で、Fontanを含めた根治術到達率は5年48.3%、10年56.9%、20年65.5%。初回手術でBTを施行した11例(日齢29から11歳(3.6ヶ月))は、病院死亡2例、根治術到達4例(BVR1例(遠隔死例)、Fontan3例)、根治術非到達5例(high Rp: 3, ventricular dysfunction: 1, poor PA: 1)であったが、Starnes手術例3例はすべてFontan手術に到達した。BTによりQp(1.60±0.26→2.72±0.83, P <0.05)とPA index(128.6±43.5→174.4±46.4, P = 0.02)は有意に増加したが、SaO2は有意な改善を認めずCTRの増大(61.1±7.4%→66.6±7.4%, P = 0.02)とLVEFの低下(55.6±8.7%→45.0±7.1%, P<0.01)を認めた。根治術到達群では初回手術時年齢と遠隔期BNPの間に強い相関を認めた(r = 0.95, P<0.01)。【結論】比較的高年齢で施行した短絡手術は心不全を惹起し、術後左室機能の低下が懸念される。有意な三尖弁逆流を有する肺動脈閉鎖例では早期のStarnes手術を介したTCPC completionが良好な遠隔成績につながる。