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[I-EOP01-04] 乳び胸腹水を止める、低侵襲小児リンパ外科
Keywords:胸水, 腹水, リンパ
【背景】術後および先天性乳び胸水・腹水は入院期間の大幅な延長や、成長障害に繋がる。内科・外科的治療を尽くしても難治化することが少なくない。われわれはリンパ流再建を目的とした専門的外科治療を行ない、治療効果を実感してきた。【目的】われわれが経験した乳び胸腹水患者の治療方針と術後経過について後方視的に検討した。【方法】2014年4月以降、われわれが診療を行なった対象患者は8名であった。いずれも内科治療で効果が限定的であったために外科治療を要した患児である。リンパ専門の検査・治療として主にリンパ管造影法(インドシアニングリーン、リピオドール)、リンパ管静脈吻合術を施行した。うち5名は基礎疾患があった。(21trisomy3名, Noonan症候群1名, 難治性血管奇形1名)【結果】3例で胸水・腹水の軽快を認め、術後早期に自宅退院した。2例は継続加療を要したが、輸血製剤使用量の減少や呼吸状態などの改善を認めた。2例は治療経過中に感染症などを契機として死亡した。死亡例はいずれも先天性難治性乳び胸水で、継続治療が困難であった。【考察】乳び胸腹水の原因は主に3つある。先天的なリンパ管の脆弱性、リンパ管腫などを伴うリンパ管内うっ滞、手術操作など外傷を契機としたリンパ管の損傷である。リンパ管静脈吻合術はリンパ管から細静脈へバイパスを作成しリンパ液をドレナージすることで漏出部への流入量を減少せることが治療効果をもたらす。また外傷によるリンパ管損傷の場合、漏出点を直接塞ぐことで治療効果が得られる。われわれの方法はいずれも四肢や鼠径部体表の浅い手術操作のため低侵襲であり、重症心機能障害を持つ患児に対しても適応しえる。一方で未だ症例数が少なく、今後の症例集積とエビデンス構築が求められる。【結論】乳び胸腹水はリンパ管疾患である。難治性であっても病態に立脚した治療方針を立てることで、リンパ流を対象とした低侵襲な治療の可能性が示唆された。