第53回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

E-Oral Presentation

画像診断/成人先天性心疾患

E-Oral Presentation 2 (I-EOP02)
画像診断/成人先天性心疾患

2017年7月7日(金) 18:00 〜 19:00 E-Oral エリア (1F 展示イベントホール)

座長:長嶋 光樹(東京女子医科大学病院 心臓血管外科)

18:00 〜 19:00

[I-EOP02-08] 成人施設への移行の現状と改めて問われる小児病院の役割

城戸 佐知子, 田中 敏克, 藤田 秀樹, 富永 健太, 小川 禎治, 亀井 直哉, 松岡 道生, 谷口 由記, 平海 良美, 上村 和也, 瓦野 昌大 (兵庫県立こども病院 循環器内科)

キーワード:移行, 小児病院, 課題

近年、小児病院と成人施設の循環器内科が協力して移行に取り組む事例が多く見られるようになってきた。当院では、2010年から循環器内科医師の小児病院における研修を開始、2011年に大学病院で成人先天性心疾患外来を開設した。その後、間借り診療の形を取っていた循環器病センターにおいても循環器内科医主体の外来が実現し、この2施設を中心に小児病院から成人期医療に移るシステムの骨組みができ、さらにいくつかの施設の参画を得て県内のネットワークが拡大しつつある。現在、2つの施設で、循環器内科医師と小児循環器内科医師の協働外来で、計397名の患者を診療している。そのうち小児病院からの移行は202名で、195名は他院からの紹介であり、外来の看板を上げて診療実績を作ることで、県内・地域で行き場を失っていた成人先天性心疾患患者の受け皿になることができている。循環器内科医は、心疾患以外についても救急診療に対するハードルが低く、現時点での患者の全体像を掴むことに長けている。一方で、小児科医は患者の疾患の歴史的背景と手術の結果を時間軸の中で理解している。両者の長所を生かして診療実績は伸びているが、小児循環器医として成人施設に患者を転院・移行させる現場に居合わせることで、小児病院の次なる課題が明確になってきた。(1)成人患者の手術例は決して多くはないが、今後増加する複雑心奇形の再手術を誰がどこで行うべきなのか。(2)成人患者の終末期医療については、小児病院の不得手とするところである。(3)「移行」は単に成人病院へ移ることではない。小児病院で何をすれば患者が疾患を持ちながら生きていく人生の物語を引き出すことができるのか。これらは小児循環器医が責任を持ってコーディネートしていかなければならない課題であり、(1)(2)については事例からの考察を、また(3)については思春期外来での取り組みを紹介し、今後の「移行」の在り方を考える機会とする。