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[I-EOP04-01] 三尖弁異形成・グレン手術後心不全に発症した肝芽腫に対する集学的治療経験
Keywords:グレン循環, 肝芽種, カテーテル治療
【緒言】稀ではあるがグレン循環・フォンタン循環に重篤な心外疾患を合併することがあり、その治療戦略は困難を極める。今回、グレン循環下で肝芽腫を発症し、化学療法~外科手術まで集学的治療に成功した症例を経験した。【症例】1歳9ヶ月の男児。胎児診断された三尖弁異形成、肺動脈閉鎖。日齢1にスターンズ手術。生後8ヶ月でグレン術を施行。1歳8ヶ月でフォンタン術前評価を行ったが、この際に腹部膨満を指摘され、肝芽種と診断。治療目的で当院へ転院。前医でのカテーテル検査結果は、SVC圧 18mmHg、Rp 1.6、LVEDP 12mmHgで、左右肺動脈分岐部に狭窄を認めた。MR 1度、BNP=65 pg/ml、LVEF=51%(LVEDV=286% of N)という心機能で、輸液負荷で容易に浮腫・喘鳴が悪化するような状態。腫瘍は右葉後区に直径8cm。AFPは155000ng/ml。【方針と経過】関係各科の合同カンファレンスにて「化学療法・大量輸液に耐えうる血行動態を構築後に、化学療法を施行。腫瘍縮小を図り摘出手術を行う」方針となり、循環器科としては心不全治療を厳密に行うこととした。まずカテーテル治療で、計11ヶ所の側副血管を塞栓。SVC圧は12mmHgへ低下。狭窄している肺動脈分岐部は前医でバルーン拡張して、圧較差はなし。次に心不全治療(利尿剤・輸血)を強化。化学療法に伴う大量輸液時には厳密な水分管理を施行。肝芽種はPRETEXT 2であり、CDDP療法(シスプラチン単剤)を4クール行い、肝区域切除を実施。腫瘍摘出に際してもカンファレンスを行い、大量出血・循環変化時の輸血、強心剤等の計画を決定。幸い周術期経過は良好(出血は93ml。バイタル変化なし。SpO2は80%台で安定)。CDDP療法を追加して、退院。現在は再発なく、フォンタン手術に向けて待機中。【結語】血行動態の不安定な先天性心疾患に重篤な心外疾患を合併する場合にはその治療は困難であるが、関係各科と密に連携することで困難な症例の治療を成功に導くことができた。