第53回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

E-Oral Presentation

集中治療・周術期管理/対外循環・心筋保護

E-Oral Presentation 4 (I-EOP04)
集中治療・周術期管理/対外循環・心筋保護

2017年7月7日(金) 18:00 〜 19:00 E-Oral エリア (1F 展示イベントホール)

座長:西岡 雅彦(沖縄県立南部医療センター こども医療センター小児心臓血管外科)

18:00 〜 19:00

[I-EOP04-06] 当院小児集中治療室(PICU)に入室した先天性心疾患術後の横隔神経麻痺(PNP)へのアプローチについて

杉村 洋子 (千葉県こども病院 集中治療科)

キーワード:横隔神経麻痺, 先天性心疾患, PICU

【背景】先天性心疾患術後に合併するPNPは、呼吸機能障害のみならず、血行動態に支障をきたす場合がある。しかし、積極的な横隔膜縫縮術が推奨されてはおらず、経過観察されている症例も多い。今回、TCPC後の約1年のPNPの後に縫縮術を施行され、術後管理に難渋した症例を経験した。【目的】当院のPNP症例を振り返り、治療指針を検討する。【対象・方法】対象は2011年から2016年までに当院PICUにRACHS-1に登録されている心臓外科手術後に入室した852名中、PNPの記録がある20例。診療録等から後方視的に、PNPを惹起した心臓手術施行時の年齢、疾患、術式、縫縮術の有無と時期、縫縮術を施行せずに経過観察した場合の経過等について検討した。PNPの診断は、胸部レントゲン写真での横隔膜拳上及び抜管時の横隔膜エコー所見を用いた。【結果】心臓手術施行時の年齢は中央値7か月(日齢6~2歳8カ月)、疾患は単心室系8例、二心室系12例で、両方向性グレン術、大動脈弓修復を含む手術が多かった。心臓手術時の体重は中央値5300g(2605g~10.7kg)で、麻痺側は左:13例、右:6例、両側:1例であった。縫縮術は5例(単心室系3例、二心室系2例)に施行された。呼吸障害合併は3例で、いずれも心臓術後1か月以内に縫縮した。呼吸障害非合併2例のうち1例はグレン術後で、左のRp高値が判明し、PNPに起因する可能性を考慮してグレン術後13か月目に縫縮し、翌日に退室した。もう1例のTCPC後は、TCPC後10か月での縫縮となったが、術後に呼吸・循環が安定せずに3週間のPICU滞在を要した。縫縮術を施行せずに、経過観察した生存症例は、全例5か月以内に胸部レントゲン写真上の横隔膜拳上は改善した。一方で、3例が心不全が高度となり死亡した。【考察・結語】呼吸障害がない場合でも単心室系疾患では、血行動態に影響を及ぼす可能性があり、特にTCPC後は麻痺の自然軽快が予測される時期を目安の縫縮を考慮すべきである。