第53回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

教育講演

教育講演 (I-KNL)
小児遺伝性疾患発症機序の解明

2017年7月7日(金) 15:10 〜 15:50 第4会場 (1F 展示イベントホール Room 4)

座長:市田 蕗子 (富山大学附属病院循環器センター)

15:10 〜 15:50

[I-KNL-01] 小児遺伝性疾患発症機序の解明

緒方 勤 (浜松医科大学 小児科)

小児遺伝性疾患の発症機序の解明は、分子生物学的解析手法の発展により、大きく進展しています。本講演では、最新の分子生物学的手法が、どのように小児遺伝性疾患発症機序の解明に貢献しているかについて、われわれのデータをもとに発表したいと思います。

全ゲノムアレイCGH
これは、通常の染色体検査では同定できない微細ゲノム構造異常(欠失・重複)(CNV: copy number variants)を検出する方法です。近年では、ヒト遺伝性疾患の多くが、遺伝子内変異(DNA配列異常)ではなく、このCNVにより発症しているとされています。本講演では、遺伝子を含むCNVが発症機序となる疾患の代表として裂手裂足症を、遺伝子を含まないCNVが発症機序となる疾患の代表としてアロマターゼ過剰症について取り上げます。

全エクソーム解析
これは、全てのタンパクをコードする遺伝子のエクソン(および近傍のイントロン)を解読する技術です。この方法により、原因不明の遺伝性疾患と考えられていた患者の約30%において、その発症原因が同定されるようになりました。この技術は、最近開発されたものですが、急速にclinical sequenceへと臨床応用されるようになってきています。本講演では、心房中隔欠損症、IGF2遺伝子異常、不完全型アンドロゲン受容体異常症について概説します。

全ゲノム解析
これは、文字通り全ゲノムを解読する技術です。これは、臨床応用される段階には達していませんが、ある特定の領域の詳細なゲノム解析には極めて有用です。本講演では、レトロトランスポゾン挿入による偽性副甲状腺機能低下症や相互転座融合点の決定の有用性について述べます。

全エピゲノム解析
これは、ゲノム全域におけるCpGサイトのメチル化パターンを解析する技術です。小児遺伝性疾患では、インプリンティング疾患患者における多座位メチル化異常の解析などに応用されます。

最後に、多施設共同研究の重要性について言及したいと思います。