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[I-OR02-04] 層別ストレイン解析を用いた小児がん患者の心機能低下早期発見における有用性
キーワード:心機能, 小児がん, 層別ストレイン
【背景】近年、がん患者の死亡率は減少してきている一方で、抗がん剤治療による心毒性が問題となり、心不全に至ると死亡率は2年で60%に及ぶ。心毒性の早期発見は生命予後を左右するが、従来の心エコー法ではその検出能力に限界がある。また、抗がん剤は左室心筋内層から影響を及ぼすという報告がある。【目的】左室の内層及び中層・外層strainを用い、小児がん治療群における心機能低下の早期発見を試みる。【方法】対象は6歳から40歳の小児がん治療群40例及び正常対照群103例。それらを16歳未満(治療後年少群及び正常年少群)と16歳以上(治療後年長群及び正常年長群)に分類した。Vivid E9(GE Healthcare, Milwaukee, WI, USA)を用い、傍胸骨短軸像の心基部、乳頭筋部、心尖部レベルのcircumferential strain(CS)を、心尖部四腔断面像よりlongitudinal strain(LS)を、内層、中層及び外層にて計測した。【結果】検査時年齢は、治療後年少群11.5±2.8歳、治療後年長群24.0±7.3歳、正常年少群10.2±2.8歳、正常年長群26.2±5.9歳だった。治療群の治療後年数は、年少群は4.7±4.5年、年長群は13.0±7.8年だった。全例左室駆出率は正常範囲内だった。CS:治療後年少群は、心基部で内層CSが正常群より低下し(p=0.004)、中層及び外層CSは保たれていた。治療後年長群は、心基部及び乳頭筋部の内層及び中層CSが正常群より低下し(全てp<0.001)、心尖部では内層CSのみ正常群より低下した(p=0.008)。LS:治療群は、年少群及び年長群ともに正常群と有意差を示さなかった。【結論】小児がん治療群において、従来の心機能指標である左室駆出率やLSは低下を示さなかった一方で、心基部の内層CSは年少群から低下しており、内層CSが最も鋭敏な心毒性指標になりうることを示唆する。これらは小児がん患者における心機能の新たな知見である。