第53回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

周産期・心疾患合併妊婦

一般口演 6 (I-OR06)
周産期・心疾患合併妊婦

2017年7月7日(金) 09:40 〜 10:30 第3会場 (1F 展示イベントホール Room 3)

座長:城戸 佐知子(兵庫県立こども病院 循環器内科)

09:40 〜 10:30

[I-OR06-05] 胎児母体間輸血症候群と帝王切開後の腹壁血腫を合併したFontan術後妊娠の1例

三浦 文武1, 嶋田 淳1, 北川 陽介1, 大谷 勝記1, 高橋 徹2 (1.弘前大学 大学院医学研究科 小児科学, 2.弘前大学 大学院保健学研究科)

キーワード:Fontan, 心疾患合併妊婦, 抗凝固療法

先天性心疾患の管理の進歩により成人先天性心疾患(ACHD)の妊娠分娩例は増加傾向にあるが、複雑心奇形の機能的手術であるFontan手術後妊娠分娩の報告はまだ少ない。症例は28歳初産婦。三尖弁閉鎖(IIc)に対して8歳時にFontan循環確立(心内導管、fenestrated TCPC)。経過中に多発性脳梗塞を合併するも明らかな後遺症なし。23歳時に再TCPC(心外導管、fenestrationなし)。26歳時の血行動態評価で中心静脈圧~平均肺動脈圧:9~10 mmHg、肺血管抵抗:1.8 単位・m2、心係数:2.8 L/min/m2と良好なFontan循環を維持。NYHAI度、SpO2は94%。28歳時に自然妊娠成立。妊娠8週に絨毛膜下血腫を認めたが胎児発育は順調。妊娠27週4日に胎動減少を契機に胎児貧血と診断され、緊急帝王切開術で1,050 gの男児分娩。児は重度の貧血(Hb 3.3 g/dL)を認め、赤血球輸血と呼吸窮迫症候群に対するサーファクタント補充療法を行い、その後の経過は順調で現時点で明らかな神経学的合併症なし。母体血中のヘモグロビンFとαフェトプロテイン濃度の上昇から胎児母体間輸血症候群と診断。母体は術後約7 時間で抗凝固を再開したが急激に腹壁血腫の貯留を認め、緊急腹壁血腫除去術を要した。その後心不全や低酸素血症の進行なく順調に経過。近年、ACHD、特にFontan術後妊娠例では出血性合併症が多いとの報告が散見される。Fontan術後には抗凝固療法が必要なことが多いが、周産期管理を行う際には細心の注意が必要である。