The 53rd Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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Free Paper Oral

心血管発生・基礎研究

Free Paper Oral 8 (I-OR08)

Fri. Jul 7, 2017 9:35 AM - 10:25 AM ROOM 5 (Exhibition and Event Hall Room 5)

Chair:Susumu Minamisawa(The Jikei University School of Medicine)

9:35 AM - 10:25 AM

[I-OR08-01] iPS細胞心筋を用いたQT延長症候群への診断利用

吉永 大介1, 馬場 志郎1, 柴田 洋史1, 平田 拓也1, 牧山 武2, 平家 俊男1 (1.京都大学 医学部 医学研究科 発達小児科学, 2.京都大学 医学部 医学研究科 循環器内科学)

Keywords:QT延長症候群, iPS細胞, ゲノム編集

【背景】QT延長症候群(LQTS)は遺伝性不整脈疾患で、診断や治療方針の検討に遺伝子検査が有用とされている。しかし、疾患特異的な浸透率の低さや幅広い表現型から遺伝子検査が充分な役割を果たしているとは言い難い。よって、個々の表現型に即した診断ツールの開発が必要である。【目的】LQTS患者由来iPS細胞から分化した心筋細胞を用いてin vitroでの診断系を構築する。【方法】KCNH2 A422T変異をもつLQTS 2型と診断された53歳女性の皮膚線維芽細胞からiPS細胞を樹立し心筋細胞へと分化させた。(LQT2A422T-iPSC CMs)この分化心筋に対して、Multi-electrode arrayシステムを使用して、心電図でのQT時間に相当するfield-potential duration(FPD)を測定した。また、IKr特異的阻害剤E4031を用いてFPDの変化率(ΔFPD)を比較した。心筋拍動数によるFPD値の補正は、Fridericia法を用いた(FPDc)。さらに、FPDの違いがKCNH2 A422T変異に由来することを証明するためにCRISPR/Cas9を用いてgene correctionを行ったiPS細胞(LQT2corr-iPSCs)を作成し、その分化心筋(LQT2corr-iPSC CMs)のFPDも測定した。【結果】LQT2A422T-iPSC CMsのFPDcはコントロール分化心筋と比較して有意に延長していた。また、E4031 100nMに対するΔFPDは50.3±5.6% vs. 105.7±22.1% (p=0.030)であった。一方、LQT2corr-iPSC CMsのFPDはLQT2A422T-iPSC CMsと比較して短縮し、ΔFPDもコントロールと同等だった。パッチクランプ法でLQT2corr-iPSC CMsのIKr densityの正常化を認めた。【考察】IKr阻害でΔFPDは再分極におけるIKrの寄与度を反映していると考えられ、本手法によりLQT2心筋のIKr減少を予測できることが示された。本手法により、IKr関連疾患スクリーニングが可能となり、遺伝子検査に随伴する倫理的問題を回避できるだけでなく、臨床に即した診断が可能性である。さらに本手法は他のサブタイプのLQTSや心筋チャネル病にも応用できる可能性がある。