The 53rd Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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Free Paper Oral

心血管発生・基礎研究

Free Paper Oral 8 (I-OR08)

Fri. Jul 7, 2017 9:35 AM - 10:25 AM ROOM 5 (Exhibition and Event Hall Room 5)

Chair:Susumu Minamisawa(The Jikei University School of Medicine)

9:35 AM - 10:25 AM

[I-OR08-02] iPS細胞を用いたダウン症候群特異的肺高血圧症発症機序の解明

石田 秀和, 小垣 滋豊, 那波 伸敏, 杉辺 英世, 桂木 慎一, 馬殿 洋樹, 石井 良, 鳥越 史子, 成田 淳, 北畠 康司, 大薗 恵一 (大阪大学大学院 医学系研究科 小児科学)

Keywords:ダウン症候群, 肺高血圧症, iPS細胞

【背景】
ダウン症候群(DS)はその40-50%に先天性心疾患を伴い、左右短絡疾患を伴うDS患者では非DS患者よりも肺高血圧症の進展が早いことが知られている。気道狭窄など呼吸器系の問題がその原因の一つと考えられているが、DS患者における肺血管の病理組織学的解析などから、血管細胞そのものが異常である可能性も示唆されている。
【目的】
DS患者由来iPS細胞と健常人由来iPS細胞を用いて、それぞれを血管内皮細胞(EC)と平滑筋細胞(SMC)に分化誘導し、その細胞生物学的特徴を明らかにする。
【方法と結果】
DS-iPS細胞は倫理審査委員会承認のもと当院出生の患者皮膚線維芽細胞から樹立し、核型解析で21番染色体トリソミーが維持されている事を確認した。既報の方法(2015. Patsch et al. Nat Cel Biol.)を用いて、それぞれのiPS細胞をECとSMCに分化誘導した。ECは分化誘導6日目にPECAM1を用いたFACSにより単離を行ない、フィブロネクチン処理した培養皿で継代培養した。SMCはゼラチンコートした培養皿で継代培養を行った。それぞれ分化誘導8日目の時点で、PECAM1とSmooth muscle myosin heavy chainを用いたフローサイトメトリーで評価したところ、95%以上の純度であった。ECにおけるミトコンドリア膜電位は、DS-ECでは有意に低下しており、また、単位ミトコンドリアあたりの活性酸素種はDS-ECで有意に上昇していた。一方、EdUを用いて細胞増殖能を測定したところ、DS-SMCでは有意に増殖能が増加していることが判明した。
【結語】
ダウン症候群の血管内皮細胞ではミトコンドリア機能の異常から細胞内活性酸素種が上昇しており、これが内皮細胞機能障害を引き起こし、非ダウン症候群患者と異なる血管応答性につながっている可能性がある。