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[I-OR12-05] 超軟質心臓レプリカの再現性確保のための新しい画像検証システムの開発
Keywords:3Dプリンティング, MSCT, 画像処理
[背景]複雑先天性心疾患の外科手術をより安全で確実にするために、我々は患者のMSCT3次元画像データから、3Dプリンティング技術である光造形と真空注型法をハイブリッドさせた精密超軟質心臓レプリカを製作し、術前シミュレーションに寄与してきた。しかし、レプリカの製造過程では鋳型となる樹脂に収縮や破損が生じて、術式の判断に悪影響を及ぼす可能性がある。そこで心臓レプリカの正確性を検証するため、完成したレプリカを工業用MSCT装置で撮影し、画像解析ソフトを用いて患者のMSCT画像情報と比較検証した。[方法]臨床研究として造型を行った2歳以下の先天性心疾患16例(DORV 9例、ccTGA 3例、HLHS 3例、TOF(PA/VSD) 1例)で、完成した心臓レプリカを工業用MSCT(Zeiss, METROTOM 800)でスキャンし、産業用CT解析ソフト(VOLUME GRAPHICS, VGStudio MAX3.0)を用いて、レプリカと患者の3画像情報を照合検討し、生じた誤差をヒストグラム表示するとともに、心臓の3D画像上に疑似カラー表示した。[結果]形状誤差は概ね正規分布を示し、偏差の中央値は0.1-0.2mm正方向に移動し、心臓レプリカが患者MSCTデータよりわずかに大きく表示される傾向にあった。心室および心房部分では誤差はおよそ+/-0.5mm以内で表示され、手術で問題となる心臓内腔、特に心室中隔欠損孔の近傍でも、際立った誤差は認められなかった。一方、CT撮影時に固定が困難な血管部分、特に大血管の先端部分では、部分的に+/-1.0mm以上の比較的大きな誤差が観察された。全表面積で定量が可能であった9例では、累積面積90%での偏差は0.54+/-0.21mmであった。[考察]完成した心臓レプリカは、外科手術で重要となる心房心室の外観とその内部構造において、患者の3Dデータを平均0.6mm以内の誤差で再現していることが明らかになった。造型の精密度の点において、心臓レプリカは患者の手術シミュレーションを行うに信頼性があることが示唆された。