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[I-OR14-01] 超音波血流計を用いた術中上行大動脈血流量モニタリングによる肺動脈絞扼術の至適絞扼度の決定
キーワード:新生児, 外科治療, 姑息術
【はじめに】肺動脈絞扼術における絞扼の調節は、従来Truslerらが提唱した体重から算出する基準をはじめとして、酸素分圧、肺動脈圧の測定など様々な指標が報告されている。しかしながら、実際の臨床の現場では、外科医の経験をもとに総合的に判断されることも少なくない。我々の施設では、トロント小児病院から報告された術中の上行大動脈血流量の計測をもとに絞扼の調整を行なっている。【方法】超音波血流計を用い、トランジットタイム法による肺動脈絞扼前後での上行大動脈の血流量(=体血流量)の測定を行なった。絞扼術はテフロンテープを用いて、最初の周径は、Truslerの式に準じて決定した。絞扼の調整は主に上行大動脈の血流量が絞扼前の50%増加を目標として行なった。【結果】通常の肺動脈絞扼術10例、両側肺動脈絞扼術の2例の計12例に用いた。疾患の内訳は、二心室症例が9例(VSD5例、AVSD2例、総動脈幹症1例、DORV1例)、単心室が1例(ccTGA, DILV1例)、ボーダーライン2例(IAA/VSD1例、DORV/HypoLV1例)であった。12例全例の平均の上行大動脈の血流量は0.78L/min/BSAから肺動脈絞扼後には1.31L/min/BSAと有意に増加し、絞扼前後の上行大動脈の血流量は正の相関を示した(R2=0.61)。また肺動脈絞扼後の上行大動脈の血流量は、PHのあったVSDの1例を除く全例で増加しており、平均で70%の増加がみられた。絞扼テープの最終的な周径と上行大動脈の血流量の増加には相関は認めなかった。術後経過は全例順調であり、6例が根治術もしくはBDG術に達し、6例は根治術の待機中である。【結語】超音波血流計による上行大動脈血流量の術中評価は肺動脈絞扼術における指摘絞扼度の決定に有用であった。元来、肺動脈絞扼術の目的は至適体血流量を確保することであり、今回用いた指標は、酸素分圧や肺動脈圧など術中に変化しやすいパラメータに比べて信頼できると考えている。