第53回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

外科治療

一般口演 15 (I-OR15)
外科治療 2

2017年7月7日(金) 09:35 〜 10:25 第6会場 (1F 展示イベントホール Room 6)

座長:原田 順和(長野県立こども病院)

09:35 〜 10:25

[I-OR15-02] Fontan手術到達例から見たAsplenia syndromeの外科治療の成績

笠原 真悟, 井上 善紀, 川田 幸子, 佐野 俊和, 堀尾 直裕, 小林 純子, 石神 修大, 藤井 泰宏, 黒子 洋介, 小谷 恭弘, 新井 禎彦 (岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 心臓血管外科)

キーワード:Asplenia, Fontan, 外科治療

(はじめに)治療困難とされるAsplenia syndrome(ASP)においても、Fontan手術到達率においても良好な成績が報告されている。しかしながら、ASPにおいては多種多様の問題を抱え、それゆえ、すべての最終目標がFontan手術と拡大解釈され、長期成績において多くの問題を抱えるに至ったのも事実である。Fontan手術後遠隔成績に関与する因子としてのASPの持つ問題について検討した。(対象、方法)1991年から2016年に当院で先天性心疾患に対しFontan手術を行った427例を対象とし,non ASP群は309例で、ASP群は118例(27.6%)であった。手術時年齢は中央値3(1-52)才、SpO2は中央値82(42-88)%、PApは中央値11(5-25)mmHg、PA indexは中央値262(103-672)mm2/m2であった。Fontan手術前には積極的な房室弁形成術、Damus-Kaye-Stansel(DKS)吻合の採用、左右の肺動脈の均衡発育を目指した肺動脈形成術を行っている。また、TAPVCを合併した症例では、suture less法の採用とBDGと同時に行うdelayed repair法を積極的に採用している。(結果)Kaplan Meier法による生存率はNon ASP群は1年、5年、10年、15年で96.7%、94.1%、91.1%に対し、ASP群は88%、81%、78%、71%であり、ASP群は遠隔死亡が高かった。ASP群の解析で心外TAPVCを合併した症例はLog-rank testでP<0.001と明らかに死亡率が高かったが、ASP+TAPVCにCAVVRの合併の有無(P=0.062)、肺動脈閉鎖の有無(P=0.423)は有意差がなかった。Fontan手術後の死亡率における危険因子としてのOdds ratioにおいてもASP合併(χ2=5.46)、TAPVC合併(χ2=13.5)は関連性が高いと判断された。(結語)積極的なFontan手術という立場で治療を継続しているが、多くの危険因子を規定しているものはTAPVCを合併するASPであることがわかった。段階的手術治療を行ったとしても、この基礎疾患を変えることは不可能であり、この疾患群については治療目標を再考しなければならない。