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[I-OR17-01] 心室中隔欠損閉鎖術後の早期退院とその阻害因子の検討
キーワード:VSD, 早期退院, risk factor
質の高い医療とは、リスクが低く、低侵襲で、回復の早い、そして患者満足度の高い医療と考える。逆に、このような医療を提供できれば、患児は早期に退院できる。今回、心室中隔欠損症(VSD)手術例で以下のようにEnhanced Recovery Protocol(ERP)を立て早期回復と早期退院を目指したので報告する。【ERP】1家族への十分な説明と理解、2統一のとれた手術を施行するためのスタッフの教育と訓練、3無駄のない手術、4低充填量回路による低侵襲常温体外循環、5術後心嚢液貯留を防ぐための心嚢―右胸腔間の有窓術、6ペースメーカリードの制限的使用、7早期抜管、8柔らかな小ドレーン使用、9点滴・ドレーン類の早期抜去、10経時的な回復過程の家族への説明と情報共有、11退院時の説明(自宅で起こりうる事柄と病院への連絡方法)【症例】 過去13年間に当センターにてVSD閉鎖術をおこなった全症例(595例)を対象とした。年齢の中央値7ヶ月(10日~18才)、体重6.1kg(1.9~73kg)。追跡期間は7.0±3.6年。【方法】早期退院達成率と生存率。早期退院を阻害する因子として1:年齢、2:体重、3:手術時間、4:体外循環時間、5:大動脈遮断時間、6:染色体異常の有無、7:肺動脈絞扼術の有無、8:PHを挙げ多重ロジステイック回帰分析で検討。【結果】術後4日以内の退院は61%、7日以内は88%。早期退院の阻害因子は、肺高血圧、染色体異常、年齢(体重)であった。退院後7日以内の再入院は14例(2.4%)で大きな合併症はなかった。【結語】低侵襲、低リスク、早期回復を達成させるためのERPを徹底させることで約9割のVSD症例が7日以内に退院できた。早期退院を阻害する因子は肺高血圧(Odds 2.03)、染色体異常(4.07)、年齢(5.16)であった(p<0.001)。今後、術後4日以内の退院率を上げるには、肺動脈絞扼術や肺血管拡張剤の適切な使用など肺高血圧管理が重要と考えられた。