第53回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

集中治療・周術期管理

一般口演 19 (I-OR19)
集中治療・周術期管理 2

2017年7月7日(金) 16:05 〜 16:55 第6会場 (1F 展示イベントホール Room 6)

座長:芳村 直樹(富山大学大学院医学薬学研究部外科学(呼吸・循環・総合外科)講座)

16:05 〜 16:55

[I-OR19-03] 小児期開心術における高感度心筋トロポニンI ―術式と周術期因子の影響―

横澤 正人1, 澤田 まどか1, 長谷山 圭司1, 高室 基樹1, 荒木 大2, 夷岡 徳彦2, 大場 淳一2, 和田 励3, 春日 亜衣3, 布施 茂登4 (1.北海道立子ども総合医療・療育センター 小児循環器内科, 2.北海道立子ども総合医療・療育センター 小児心臓血管外科, 3.札幌医科大学 小児科, 4.NTT東日本札幌病院 小児科)

キーワード:心筋トロポニン, 開心術, 人工心肺

【はじめに】第51回本学会において、我々は小児期開心術では高感度心筋トロポニンI(TnI)は術後1日をピークに速やかに上昇し下降することを報告した。今回は術式と周術期因子が術後のTnI上昇に与える影響について検討した。【対象・方法】2012年4月から2016年12月まで当施設で心内修復術を施行した心房中隔欠損(ASD)群61例、心室中隔欠損(VSD)群70例、完全型房室中隔欠損(CAVSD)群5例、ファロー四徴(TOF)群14例を対象とした。合併症、遺残病変を認めた例は除外した。術後1日に血漿TnIを測定し、術式ならびに周術期の諸因子とTnI上昇の関係について検討した。さらに冠動脈合併症を認めた5例について比較検討した。統計学的手法は分散分析法を主に用いた。【結果】術後1日のTnIは、ASD群に比較しVSD群は有意に高値であり、VSD群に比較しCAVSD群、TOF群は有意に高値であったが、CAVSD群、TOF群間には有意差を認めなかった。4群の周術期因子は、手術時間、心肺時間、遮断時間がASD群に比較しVSD群は有意に高値であり、VSD群に比較しCAVSD群、TOF群は有意に高値であったが、両群間に有意差を認めなかった。すべての開心術(ASD群+VSD群+CAVSD群+TOF群)においてTnIと手術時間、心肺時間、遮断時間にはr=0.66 , 0.70, 0.70の正の相関関係が認められた。空気塞栓3例のTnIは高値であり、術後の心電図、心エコー所見から心筋保護等による冠動脈イベントが推定された2例では著明な上昇が認められた。【考察】小児期開心術において術後1日のTnIの上昇は、心筋切除などの術式に左右されず、人工心肺条件に大きく影響されることが判明した。冠動脈合併症例ではすべてに上昇が認められた。潜在的な周術期の冠動脈合併症を的確に把握する意味で、術後早期にTnIを測定することの有用性が示唆された。