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[I-OR19-03] 小児期開心術における高感度心筋トロポニンI ―術式と周術期因子の影響―
キーワード:心筋トロポニン, 開心術, 人工心肺
【はじめに】第51回本学会において、我々は小児期開心術では高感度心筋トロポニンI(TnI)は術後1日をピークに速やかに上昇し下降することを報告した。今回は術式と周術期因子が術後のTnI上昇に与える影響について検討した。【対象・方法】2012年4月から2016年12月まで当施設で心内修復術を施行した心房中隔欠損(ASD)群61例、心室中隔欠損(VSD)群70例、完全型房室中隔欠損(CAVSD)群5例、ファロー四徴(TOF)群14例を対象とした。合併症、遺残病変を認めた例は除外した。術後1日に血漿TnIを測定し、術式ならびに周術期の諸因子とTnI上昇の関係について検討した。さらに冠動脈合併症を認めた5例について比較検討した。統計学的手法は分散分析法を主に用いた。【結果】術後1日のTnIは、ASD群に比較しVSD群は有意に高値であり、VSD群に比較しCAVSD群、TOF群は有意に高値であったが、CAVSD群、TOF群間には有意差を認めなかった。4群の周術期因子は、手術時間、心肺時間、遮断時間がASD群に比較しVSD群は有意に高値であり、VSD群に比較しCAVSD群、TOF群は有意に高値であったが、両群間に有意差を認めなかった。すべての開心術(ASD群+VSD群+CAVSD群+TOF群)においてTnIと手術時間、心肺時間、遮断時間にはr=0.66 , 0.70, 0.70の正の相関関係が認められた。空気塞栓3例のTnIは高値であり、術後の心電図、心エコー所見から心筋保護等による冠動脈イベントが推定された2例では著明な上昇が認められた。【考察】小児期開心術において術後1日のTnIの上昇は、心筋切除などの術式に左右されず、人工心肺条件に大きく影響されることが判明した。冠動脈合併症例ではすべてに上昇が認められた。潜在的な周術期の冠動脈合併症を的確に把握する意味で、術後早期にTnIを測定することの有用性が示唆された。