9:40 AM - 10:30 AM
[I-OR22-01] 成人先天性心疾患領域における三尖弁への手術介入成績-器質的TRと機能的TRの解析
Keywords:成人先天性心疾患, 機能的三尖弁閉鎖, 器質的三尖弁閉鎖
【背景】近年弁膜症疾患を中心にTRの予後への悪影響が報告され、注目されている。成人先天性心疾患領域ではEbstein病以外にも三尖弁形成不全、右室流出路狭窄、肺高血圧、左右短絡による容量負荷、根治術後の弁尖の歪み等、様々な原因で三尖弁閉鎖不全症(TR)が発生する。成人先天性疾患領域におけるTRへの手術成績はその成因の多様性もありあまり議論されてこなかった。【対象・方法】2001年1月から2016年12月の期間に、15歳以上のEbstein病を除く先天性心疾患患者において、TRへ初回介入した32例を対象とした。術前・術中評価を基に、弁自体に問題があった器質的TR(O群)と機能的TR(F群)に分け、その成績を後方視的に検討した。【結果】O群11例、F群21例であった。年齢の中央値は各36.7(20.1-70.9)、58.5(22.7-76.2)歳で、女性は8例(72.7%)、9例(42.9%)。各原疾患の両群比(O群:F群)はASD2:16、VSD3:2、TOF3:1、PA/VSD1:0、TGA/PS1:0、部分房室中隔欠損0:2、完全房室中隔欠損1:0(p<0.05)であった。再開心術症例はO群8例(72.7%)、F群4例(19.1%)。O群の病変はVSDパッチによる弁尖変形5例、cleft 2例、dysplastic valve 1例、腱索断裂1例、疣贅1例、ペースメーカリードによる変形1例であった。術前TRの程度に有意差はなかった。O群のうち3例が三尖弁置換となったがその他は形成可能であった。観察期間の中央値は5.6(0.06-14.4)年で、早期死亡は認めず、遠隔期死亡は各群に1例ずつ認めた(突然死、癌死)。心不全での再入院はF群1例のみで、再手術はO群に2例認めた(VSD遺残短絡かつTR再燃1例、三尖弁位PVE1例)。中等度以上のTR再燃は各2例ずつ認め、回避率は10年で各群85.7%、89.5%で有意差は認めなかった。【結論】成人先天性心疾患におけるTRの患者背景は実に多様であるが、本検討ではTRの機序は形成術後の残存TR及び遠隔成績には影響を認めなかった。今後疾患毎のTRに対する治療成績評価が必要である。