6:00 PM - 7:00 PM
[I-P01-03] 遺伝子検査でTPM1遺伝子異常が指摘された胎児心筋症の兄弟例
Keywords:拡張型心筋症, 遺伝子診断, 胎児心筋症
【要旨】拡張型心筋症(DCM)の小児期発症例は1年間に0.34-0.38人/10万人と成人の発症率より低いが、1歳以下の発症例は8.34人/10万人と高い。その病因としては遺伝素因が考えられている。一方、胎児心エコーの進歩に伴い先天性心疾患の出生前診断例は増加し先天性心疾患の早期治療は可能となったが、心筋症の報告は少ない。今回我々は妊娠中期に胎児拡張型心筋症と診断、周産期死亡した兄弟例を経験した。病理解剖、遺伝子診断を施行することができた貴重な症例であり組織所見を含め報告する。【症例】家族歴;父親が心房中隔欠損(ASD)。2013年の健康診断をきっかけにDCMと診断された。父親の弟がDCMで18歳で死亡。妊娠経過;顕微鏡受精で妊娠成立。抗SSA/Ro抗体(-),抗SSB/La抗体(-)。第1子;母親38歳。在胎(GW) 21週3日時胎児腹水、心房拡大を指摘され当院紹介受診。胎児心エコーで胎児DCM疑い、三尖弁閉鎖不全、PLSVC to CSと診断された。CVPscoreは4点であった。GW27週、母体Mirror症候群のため緊急帝王切開で出生した。生後46分で死亡。染色体検査では正常核型であった。第2子;母親40歳。凍結保存受精卵にて妊娠。GW21週5日胎児心エコー施行。心機能は正常で両大血管右室起始と診断された。CVPscoreは10点であった。GW27週5日胎児腹水のため、入院管理となり胎児心エコーで両心室壁の菲薄化と著明な壁運動の低下を認めDCMと判断した。このときのCVPscoreは4点であった。GW33週0日;子宮内胎児死亡が確認された。病理組織所見は心内膜弾性線維症で原因として家族歴、胎児心エコー所見よりDCMと考えられた。両親と兄弟の遺伝子診断を施行した結果、父親と兄弟にTPM1の遺伝子変異が認められた。【考察】胎児兄弟例と父親の症状の差の原因は不明であるが、DCM患者の場合、遺伝子検索および出生前診断は重要であると考えた。