第53回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスター

胎児心臓病学

ポスター (I-P02)
胎児心臓病学 1

2017年7月7日(金) 18:00 〜 19:00 ポスターエリア (1F 展示イベントホール)

座長:竹田津 未生(北海道療育園)

18:00 〜 19:00

[I-P02-09] 診断時には左心低形成症候群への進行の予測が困難であった胎児大動脈弁狭窄の1例

加地 剛1, 早渕 康信2, 北川 哲也3, 苛原 稔1 (1.徳島大学病院 産科婦人科, 2.徳島大学病院 小児科, 3.徳島大学大学院 医歯薬学研究部 心臓血管外科学分野)

キーワード:胎児, 大動脈弁狭窄, 大動脈弓血流

胎内で大動脈弁狭窄(AS)が左心低形成症候群(HLHS)に進行する例が存在することはよく知られている。海外ではHLHSへの進行が予測される症例には胎児治療が行われることがあり、本邦でも検討されている。現在HLHS進行への予測には大動脈弓血流、僧帽弁血流、卵円孔血流といった超音波による血流評価が有効とされている。今回妊娠19週のAS診断時にはこれら血流所見がすべて正常であったにもかかわらず、急激にcritical ASに進行し、その後HLHSに至った症例を経験した。
【症例】26歳 経妊0回 妊娠19週に胎児大動脈弁輪部が狭いことを指摘され当院に紹介となった。大動脈弁輪径は1.4mmと狭く、大動脈弁通過血流速度は1.7m/Sと加速しており、ASと診断した。この時点では左室の大きさ・機能はほぼ正常内であった。また大動脈弓血流は順行性のみ、僧帽弁血流は2峰性、卵円孔血流は右左と血流所見は正常であった。その後約2週間毎に超音波検査を行っていたが、23週に大動脈弓血流が両方向性となり、25週には心内膜弾性繊維症を伴ったcritical ASに進行した。この時点で大動脈弓血流は逆行性となり、卵円孔血流は左右、僧帽弁血流は1峰性を呈した。その後、徐々に左室は低形成となり、出生後HLHSと診断されNorwood手術が行われた。
【考察】血流評価を用いても妊娠19週のAS診断時にはHLHS進行への予測はできなかった。一方AS診断後、2週間毎に超音波を行うことでHLHSへの進行過程を追うことができた。妊娠早期に胎児診断されたASではHLHSへの進行の予測は必ずしも容易ではなく、慎重な家族への説明のもと、密に経過を追うことが重要であると考えられた。