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[I-P02-10] 胎児期には単純な動脈管蛇行様に観察された、新生児動脈管瘤の一例
Keywords:動脈管瘤, 動脈管蛇行, レベルIスクリーニング
【背景】胎児心エコーの普及に伴い、軽度房室弁逆流や小さな筋性部心室中隔欠損等、生後の児の状態に影響を及ぼし難い状態も高頻度に発見される。動脈管(DA)の屈曲・蛇行も多くの症例で認められるが、異常な狭小化や拡張などの問題なく経過することが圧倒的に多い。一方で胎児期に明らかな動脈管の拡張や瘤形成をきたした症例では、生後に動脈管瘤を残しうる可能性も報告されている。【目的】胎児期に大動脈縮窄を疑われ観察した胎児で許容範囲の動脈管蛇行を併せ持つと考えたが生後に明らかな動脈管瘤と診断した症例を経験したので、若干の文献的考察とともに報告する。【症例】母28歳、0P0G。Marfan症候群等の結合組織異常の家族歴なし。在胎36週時に右胸水を指摘され当院産科を紹介された際大動脈縮窄を疑われ当科を受診した。生後CoAが顕在化する可能性は低いと診断したが、「コ」の字状に屈曲蛇行するDAを認めた。主肺動脈・DAとも最大径は7mm前後で明らかな拡張は無かったが、DA蛇行部の肺動脈側に径=4.4mmのくびれがあり、ここでの収縮期最大流速が1.96m/sと加速していた。在胎40週5日、頭位自然分娩にて出生。生下時体重3549g、Apgar score 8/9。CoAは認めずも、DA蛇行部の大動脈側が径8mmの瘤として残存し、生後1か月の時点で退縮傾向を認めない。内部血栓の形成や拡張傾向はなく、注意深く観察中である。【考按】Tsengらの報告(2005)では生後DA瘤と診断された例全てが2か月以内に自然退縮したとされるが、他の報告でごく少数ながら死亡例もある。また成人例ではDA瘤の破裂・感染・血栓塞栓症の危険性の高さに鑑み切除が望ましいとの考えもある。今後レベルIスクリーニングで指摘される極めて多くのDA蛇行の中に生後DA瘤を形成する例が少数ながら含まれる可能性があり注意を要するが、小児で症候化した動脈管瘤の報告自体がほとんど無く、判断基準作成のためには長期の経過観察と症例の蓄積を要する。