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[I-P03-05] 総肺静脈灌流異常術後の重症肺高血圧に対し、肺血管拡張薬を多剤・長期にわたり使用した無脾症候群の1症例
Keywords:無脾症候群, 総肺静脈環流異常, 肺高血圧
【はじめに】無脾症候群ではTAPVCの合併は多く、肺静脈狭窄(PVO)例は予後不良である。TAPVC術後に重症肺高血圧を来し、肺血管拡張薬を多剤・長期使用した1症例を報告する。【症例】無脾症候群、TAPVC (1b), SRV, SA, CAVV, PDAと胎内診断された。在胎40週5日に出生、心エコー検査で診断が確定された。日齢0にPVOと両側気胸のため緊急でTAPVC修復術(sutureless法)、日齢4に高肺血流のためPA bandingが施行された。術中、肺のブラ・ブレブ所見がみられた。生後1か月から低酸素血症が顕著になったが、心エコー検査でPVO所見はみられなかった。NO吸入療法での酸素化改善から肺動脈性肺高血圧(PAH)と判断され、肺血管拡張薬の3剤併用療法(bosentan+tadalafil+beraprost)が導入された。PAH・酸素化の改善はみられたが持続せず、再度低酸素状態が悪化した。肺動脈弁下狭窄による肺血流減少の診断で、生後4か月にPA debanding、BT shunt術が施行された。術後2週間の心臓カテーテル検査で高肺血流、PAH(mean PAP 43mmHg、PVR 5.4U・m2)がみられ、酸素負荷試験に反応した(Qp/Qs 1.7→2.5)。肺うっ血に伴う肺胞レベルでの酸素化不良が示唆され、肺血流制限の治療介入が検討されたが、感染症合併と多臓器不全のため生後5か月に死亡した。なお日齢0の肺生検ではIPVD 1.0、Heath-Edward分類1度であったが、末梢肺静脈の動脈化所見がみられた。【考察とまとめ】TAPVC修復術後のPVO所見はなく、肺生検で明らかな肺動脈閉塞性病変はなかったが、胎生期からの末梢レベルの肺静脈狭窄が示唆された。一方、酸素負荷試験では正常肺静脈の存在も示唆された。肺血管拡張薬に反応する肺組織の割合が限られ、肺実質異常も合併したため、治療抵抗性の低酸素血症が持続したと考えられた。無脾症候群に合併するTAPVC例では、術後のPVOが無くとも、末梢レベルの肺静脈狭窄およびPAHと異なる機序の肺高血圧が併存する難治症例がある。