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[I-P06-02] 小児開心術後の接合部異所性頻拍に対する塩酸ランジオロールの使用経験
Keywords:塩酸ランジオロール, 接合部異所性頻拍, 小児開心術
【背景】小児開心術後における頻脈性不整脈は血行動態への悪影響が強く、特に接合部異所性頻拍(Junctional Ectopic Tachycardia: JET)はその管理に難渋することが多い。ランジオロールは、近年心機能低下を伴う成人の頻脈性不整脈へと適応が拡大し、小児開心術後の頻脈性不整脈に対しても有用性が報告され始めている。【目的】小児開心術後に発症したJETに対するランジオロールの効果を検討する。【方法】2006~2016年に当院で施行した501例の小児開心術症例のうちJETを発症した10例を対象とした。手術時年齢は平均10.5±5.8カ月、体重5.8±1.0kgであり、症例とその術式はTGA2例(ASO)、VSD+ASD2例(VSD,ASD closure)、IAA+VSD1例(Ao repair+ICR)、TOF1例(ICR)、SV1例(extra TCPC)、DILV+CoA1例(DKS+BDG)、AVVR1例(AVV replacement)、VSD+CoA1例(PA repair)であった。【結果】ランジオロール投与後、心拍数は 200.0±15.1 bpmから154.2±8.1 bpmと有意に減少し、平均21.5±3.4%の心拍数減少を認めた。10例中8例は洞調律に復帰し、洞調律復帰までの時間は7.9±3.4時間であった。収縮期血圧は投与前72.6±5.9 mmHg、投与後79.7±5.9mmHgと有意な低下を認めなかった。ランジオロールの開始量は8.5±3.6μg/kg/min、維持量は7.9±0.6μg/kg/minであった。また、9例でランジオロールによるrate control後にoverdrive pacingを併用した。【考察】ランジオロールは超短時間作用型β遮断薬であり半減期も短く、血行動態が不安定になりやすい小児開心術後の頻脈性不整脈に対して迅速な対応が可能であった。特にJETのような房室解離症例では、overdrive pacingによるrate controlが可能となることは、急性期不整脈管理の有用な選択肢の一つになりうると考えられた。【結論】小児開心術後に合併したJETに対してランジオロールは有用であった。小児におけるランジオロールの安全な使用には、今後さらなる症例の蓄積と検討が必要である。