Poster (I-P07)

[I-P07-04] コクサッキーウイルスBが起因ウイルスと診断できた新生児急性心筋炎の1例

^○山形 知慧¹, 進藤 孝洋¹, 白神 一博¹, 朝海 廣子¹, 平田 陽一郎¹, 犬塚 亮¹, 坂口 洋平², 金子 明依³, 高梨 さやか³, 水口 雅³, 花岡 希⁴ (1.東京大学医学部附属病院 小児科, 2.賛育会病院 小児科, 3.東京大学大学院 医学系研究科発達医科学教室, 4.国立感染症研究所 感染症疫学センター)

Keywords:新生児心筋炎, コクサッキーウイルスB, 中和抗体

【背景】コクサッキーB群（Cox B）は急性心筋炎の代表的な起因ウイルスであるが、近年、妊婦のCox Bの抗体保有率が低いことが報告されており、抗体を持たない新生児への感染による劇症感染症の発生が懸念されている。今回我々は生後1週間に重症の急性心筋炎を発症した1例より、コクサッキーウイルスB（CB）を検出したので報告する。【症例】母は33歳(1経妊1経産)で母体合併症・感染症はなく、胎児エコーでも異常なし。40週1日2637g で仮死なく出生し、日齢2に発熱を認め入院経過観察となった。日齢7に末梢冷感、顔色不良を認め、聴診上、汎収縮期雑音・ギャロップリズムを認めた。心臓超音波検査ではEF 30％程度、moderate MR、mild PE、PHを認め、CKやトロポニンIの上昇などから急性心筋炎と診断した。NO吸入療法を含めた心不全治療を行い、心筋逸脱酵素は経時的に低下し心機能も経時的に改善傾向となり補助循環の導入には至らなかった。日齢10に採取した血清からRT-multiplex PCR及び5 ‘UTR領域遺伝子のBLAST検索によりCBがトップとなるウイルスを検出し起因ウイルスと診断した。【考察】新生児心筋炎は致死率50％以上と予後不良の疾患である。特に致死例の原因ウイルス はCox Bが約75％を占めると報告されており、本症例では中和抗体陰性であり発症・重症化に寄与している可能性がある。また、本症例は母体の感染徴候を認めなかった点など非典型的な経過であったが、速やかな診断と循環サポートにより良好な経過をたどることができ、早期治療介入により救命が可能であった。