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[I-P07-05] ウエステルマン肺吸虫症に合併したたこつぼ心筋症
Keywords:たこつぼ心筋症, 心室細動, 肺吸虫症
【背景】ウエステルマン肺吸虫はサワガニの生食を契機に発症する寄生虫疾患であり、多彩な症状を呈するが、心合併症・不整脈合併例の既存報告はない。【症例】11歳男児。10歳より持続する血痰を主訴に近医を受診したが診断に至らなかった。学校の始業式で起立した際に突然その場に倒れ心肺停止状態となり、bystander CPRを実施され、AED2回通電で自己心拍再開した。AED解析波形は多形性心室頻拍から心室細動となっていた。来院時十二誘導心電図所見はI, aVL, V3-6の広範囲なST上昇が見られた。心臓超音波検査では左室拡張末期径 46mm、左室駆出率 18%であり、びまん性壁運動低下(心基部壁運動は比較的保たれていた)がみられた。CK 550IU/Lと軽度上昇が見られたので急性心筋炎の治療に準じ集学的心不全治療を行った。BNP 11.6pg/mlであった。一方、胸部CTでは左肺に空洞陰影が多発し、喀痰鏡検で虫卵が観察された。本人のケジャン(ツガニ)摂食歴からウエステルマン肺吸虫症と診断し、抗寄生虫薬プラジカンテルを3日間投与した。第5病日に冠動脈造影と心筋生検を施行した。冠動脈造影は正常所見で心筋組織像は炎症細胞浸潤や組織内虫卵は認めなかった。入院時の好酸球 362/μLであったが、第7病日には1204/μLへ増加した。第7病日には左室駆出率 66%へ改善し、心電図ST変化は改善したものの左側胸部誘導で陰性T波が残存した。第10病日に強直間代性けいれんを認め、頭部MRIでは皮質・皮質下や脳梁膨大部に梗塞性病変を疑う所見だった。以後けいれん再発なく、第30病日に神経学的後遺症なく退院した。【考察】組織変化を伴わない急性の広汎な心電図変化、急性期局所的な壁運動異常と速やかな心機能改善、冠動脈正常所見から、本児はたこつぼ心筋症を発症したと推察された。心室細動はたこつぼ心筋症合併症の一つである。臨床経過からはウエステルマン肺吸虫症を契機に発症した稀有な例と考えられた。