Poster (I-P09)

[I-P09-07] 成人期にFontan手術を施行した症例の患者背景および手術成績の検討

^○石井 卓¹, 嘉川 忠博¹, 矢崎 諭¹, 小林 匠¹, 斎藤 美香¹, 浜道 裕二¹, 稲毛 章郎¹, 上田 知実¹, 和田 直樹², 安藤 誠², 高橋 幸宏² (1.榊原記念病院 小児科, 2.榊原記念病院 心臓血管外科)

Keywords:Fontan, TCPC, 成人

【背景】小児期にFontan手術が行えず成人になって再度適応を検討する症例が存在するが、その背景や手術成績の報告は少ない。【対象】'05年から'16年に当院でFontan手術を行った症例のうち手術時年齢が18歳以上の症例（TCPC conversion症例は除外）。【方法】診療録を用いて後方視的に検討。【患者背景】症例は25例で手術時年齢の中央値は28.0歳(18.3-45.5歳)であった。成人期になるまでの最終手術状況は、姑息術あるいは無治療が18例、グレン手術が7例で、11例では過去にFontan適応外と判断されていた。術前の酸素飽和度の中央値は82%で、術前NYHAは1度6例、2度17例、3度2例だった。術前の平均肺動脈圧は12.0±3.4mmHg、肺動脈indexの中央値は324であった。Fontanの術式は全例total cavopulmonary connection(extra cardiac法)で、2例にfenestrationが作成されていた。術後観察期間の中央値は7.1年であった。【手術成績】術後、PCPS下で帰室した症例とNO装着下で帰室した症例を各1例認めた。周術期合併症を約半数(12例、48%)に認め、主な内訳は上室性不整脈6例、胸水貯留4例、腎不全2例だった。在院死亡はPCPS下で帰室した1例のみで、術後在院日数の中央値は23日だった。退院後、入院を要する心血管イベントを14例に認めた。最多は頻脈性不整脈(6例、25.0%)で、そのうち1例は心室細動のため心肺蘇生が行われた。他に胸水貯留を3例に、心不全増悪を2例に、蛋白漏出性胃腸症を1例に認めた。術後の酸素飽和度の中央値は95%であった。術後21例で心臓カテーテル検査が行われており、下大静脈圧は11.3±3.2mmHg、Fick法で算出した心係数は1.89±0.41l/min/m²であった。【結論】成人期のFontan手術であっても術前の条件が良ければ、中心静脈圧が高度に上昇することなく酸素飽和度の改善が期待できる。ただ、術後の心拍出量は低い症例が多く、周術期合併症や退院後再入院の頻度も高いため術後も継続的な内科的治療が必要である。