第53回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスター

周産期・心疾患合併妊婦

ポスター (I-P10)
周産期・心疾患合併妊婦

2017年7月7日(金) 18:00 〜 19:00 ポスターエリア (1F 展示イベントホール)

座長:西口 富三(静岡県立こども病院 周産期センター)

18:00 〜 19:00

[I-P10-01] 重度の大動脈縮窄が自然軽快した大動脈縮窄複合・18トリソミー例

松村 峻2, 増谷 聡1, 川崎 秀徳2, 岩本 洋一1, 石戸 博隆1, 先崎 秀明1 (1.埼玉医科大学 総合医療センター 小児循環器科, 2.埼玉医科大学 総合医療センター 小児科)

キーワード:coarctation, spontaneous remission, infant

【背景】胎児期に大動脈縮窄(CoA)が疑われても、生後に大動脈峡部が拡大し、加療を要さない症例がある。しかし、重度のCoAを有する大動脈縮窄の自然軽快はきわめて稀と考えられる。そのような経過をたどった18トリソミー症例を経験したので報告する。
【症例】在胎35週1日、出生体重1592 g(symmetrical SFD)、Apgar Score 4-5-6で出生した18トリソミーの女児。心臓超音波検査ではVSD (膜性5.2mm)、CoA (最峡部 1.1mm)を認め、動脈管(PDA)は太く(4.7mm 右左短絡優位)開存した。大動脈峡部と下行大動脈のアライメントがずれ、3の字型を呈し、形態的に明らかな動脈管依存性のCoAと考えた。閉鎖しないPDAの可能性を考え、厳重なモニター下でプロスタグランジン製剤(PG)を使用せずに経過観察をしたところ、PDAは開存を続けた。心不全・けいれんに対し、利尿薬・抗痙攣薬を使用し、全身状態が落ち着き、4ヶ月時に自宅へ退院できた。その後も肺血流量は次第に増加し、LA/Ao比、胸部X線CTRの拡大傾向を認め、大動脈縮窄最峡部も徐々に拡大、5か月時(体重3.2Kg)には形態的にCoAは完全に消失し(4.5mm)、大動脈峡部と下行大動脈のアライメントも正常化した。PDA血流は左右短絡優位の両方行性であった。心不全の進行を認め、肺動脈絞扼術と動脈管結紮術を待機中である。
【考察】本症例ではCoA消失に伴い、手術を考慮する際の至適術式が生後の想定から変化した。CoAの成因として、PDA組織の影響や、縮窄部位の血流減少が示唆されている。本症例の成因として、経過から前者は考えにくい。肺血管抵抗低下に伴い、PDAを介するnetの左右血流(拡張期左右と収縮期右左の差)は生後有意に増加し、大動脈峡部血流が生後増加したことが、同部の発育に寄与した可能性が考えられる。