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[I-P15-09] 小児徐脈性疾患における胸骨正中切開アプローチによる左室心尖部ペーシングの工夫
キーワード:ペースメーカー, 左室心尖部, 心拍動下
【背景】左室心尖部ペーシングは臨床的に左室機能温存の有効性が明らかにされており、実験的には同心円状の心室内伝導が関連することが示唆されている。しかしながら、同部位へのリード留置は左肋間開胸で行われることが多く、開心術後の症例では新たな切開創を要するなどの問題がある。最近我々は、小児における胸骨正中切開による左室心尖部ペーシング症例を経験したので報告する。【対象】2014年10月より5例に心外膜電極によるペースメーカー埋め込みを施行し、ASD閉鎖を併施した症例とFontan手術及び縦隔炎後の症例を除く、3例に心拍動下に左室心尖部へのリード留置を行った。平均年齢1.8歳(0.5 - 3.3歳)、体重8.6kg(5.2 - 11.5歳) であった。原疾患は、先天性AVblock 1例、先天性SSS 1例、VSD術後AV blockが1例であった。【方法】3例全てfull sternotomyで行った。心拍動下冠動脈バイパス術の要領で、下大静脈と左肺静脈の中点にdeep pericardial suture おき、糸の間に通したガーゼをターニケットでpericardiumに固定した。ガーゼの両端を下大静脈及び左肺静脈側から引き出し、心臓を脱転した。CapSure(R)(Medtronic)を用い、感電極を前下行枝と第2対角枝間の心尖部に縫着した。【結果】手術時間 144分(134 - 153分)、出血量 15ml(4 - 32ml)、在院日数 19日(11 - 21日)であった。左室リードの閾値は0.9mV(0.4 - 1.8mV)、抵抗値は1059Ω(873 - 1208Ω)であった。観察期間は359日(103 - 797日)で、ペーシング不全や閾値の上昇等の発生はなかった。【考察】左室心尖部ペーシング有効性は数多く報告されているが、小児は未だ右室前壁ペーシングが多いと思われる。本法は、胸骨正中切開による見慣れた視野で、安定した循環動態下で左室心尖部ペーシングを行うことが可能であり、有効な手技であると考えられた。【結語】本術式は、小児ペースメーカー移植術の選択肢の一つとなり得ると思われた。