4:15 PM - 5:45 PM
[I-PD3-04] The current role of lung transplantation in the management of pulmonary arterial hypertension
Keywords:肺高血圧症, 肺移植, 生存利益
国際統計における肺移植後生存曲線を注視すると,肺高血圧(PAH)症例の死亡は肺移植後3ヵ月以内に集中しており急性期をのりきるのが他疾患と比較して困難な疾患群と考えられている.しかし一方で肺移植後1年生存者に注目すれば長期予後は極めて良好であり,これは逆に急性期さえのりきればPAH患者が移植から得られる利益が大きいことを同時に示唆している.PAH患者は移植に至るまでの長期の内科治療中に,心・腎機能低下,さらに高用量のプロスタノイド投与による肺門縦隔の新生血管増生,血小板減少をきたしていることが多く,移植時には他疾患の患者と比較して周術期における出血およびそれに伴う輸液・輸血過多による肺水腫,心不全が重篤化するリスクが著しく高い.これにより移植直後のPrimary Graft Dysfunctionが増悪しやすいことがPAHに対する肺移植の急性期死亡が多い主たる原因となっている.急性期に死亡例の多いPAHに対する肺移植における最大のリスク回避策はこれらのリスクが増大する前に適時に肺移植を実施することである.しかし不適確な内科治療不応例の見定めと肺移植実施判断の遅れはこのハードルを高いものにし肺移植のリスクを高くする.我々はPAH患者が急性期を確実に乗り切るために,外科的集中治療的管理技術の向上に加えて移植前のコンディショニングが適切であるかを重視している.その結果岡山大学では過去10年間PAH肺移植例の急性期死亡を経験していない.内科治療不応の重症例を対象に5年生存率は85%を超えており,単なる救命目的のみではなく優れたQOLの観点から肺移植の選択肢を提示できるレベルに達している.移植後急性期のハードルをうまく乗り切る管理によりPAH患者は肺移植の恩恵を受けることができる.我々の考えるPAH患者管理における肺移植の位置付けをIPAH/FPAH,PAH-CHDを含む実症例の提示をしつつ議論したい.