第53回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム 4 (I-S04)
新生児期の外科治療と神経予後

2017年7月7日(金) 08:40 〜 10:25 第4会場 (1F 展示イベントホール Room 4)

座長:市田 蕗子(富山大学附属病院循環器センター)
座長:中野 俊秀(福岡市立こども病院心臓血管外科)

08:40 〜 10:25

[I-S04-03] 先天性心疾患術後の神経発達とその規定因子

桑田 聖子, 栗嶋 クララ, 簗 明子, 斎木 宏文, 岩本 洋一, 石戸 博隆, 増谷 聡, 大津 幸江, 先崎 秀明 (埼玉医科大学 総合医療センター 小児循環器科)

キーワード:Fontan, 発達, 評価

【背景】先天性心疾患の救命率向上の一方で、発達遅延を呈する患者が多数存在し、その病態解明と改善策の確立は重要な課題である。【目的】心疾患児における治療歴、発育障害、自律神経異常、脳循環異常が発達障害と関連するという仮説を検証する。【方法】新版K式発達検査を施行した心疾患幼児22例、WISC3発達検査を施行した学童期Fontan17 例を対象に、発育、自律神経活動、治療歴および心カテ、超音波による脳循環動態を評価し発達に関連する因子を検討した。【結果】身長のZ値は-1.6±1.5と、多くの症例で発育障害を認めた。K式の全領域DQは79±15で発達遅延を示し、70未満を27%に認めた。全DQは身長Z値と強い正の相関を示し(R=0.80)、発育と発達の強い関連を示唆した。さらに身長Z値の低下は、副交感神経活動(RR-SD, HF)の低下と有意に相関するとともに、全DQの低下は、低周波成分の減弱とも関連し、発達遅延と自律神経活動全般の低下の関連が示唆された。WISC3の全検査IQ平均は84.7±18.1で、言語性IQ(90.1±16.8)が動作性IQ(82.4±17.3)より有意に高かった(P=0.02)。さらに言語性IQは、新生時期の手術既往、Glenn施行時期、Fontan施行時期、現在のSaO2と有意な相関を認め、Glenn、Fontan施行時期が早いほどIQが高かった。また、下半身の血流を犠牲にした脳血流代償機転が強い患児ほど発達遅延を呈した。脳の血流受給バランスは心拍出量と負の相関を認め、術後血行動態が脳循環に影響を及ぼしていることが示唆された。【結語】今回の結果は、1)発育評価が簡便かつ重要な発達の指標になりうる、2)正常な発育を促す栄養、日常生活習慣、および薬物管理の重要性、3)新生時期の手術回避と低酸素血症の早期改善が神経発達の改善に繋がる可能性、4)術後低心拍出状態は脳循環異常に関与し、神経発達に相加・相乗的に影響を及ぼしている可能性(脳循環を加味した慢性期管理の重要)、を示唆する。