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[II-EOP05-02] 左冠動脈肺動脈起始症に対して肺動脈側左冠動脈開口部パッチ閉鎖術を施行した1乳児例:中間報告
Keywords:ALCAPA, 単冠動脈系再建, 乳児心不全
【背景】左冠動脈肺動脈起始症 (ALCAPA)に対する外科的治療は現在、二冠動脈系再建術である左冠動脈移植術、肺動脈内トンネル法や冠動脈バイパス術が主流であるが、単冠動脈系再建術である肺動脈側左冠動脈開口部パッチ閉鎖術を施行した症例を経験し、術後3年が経過したため報告する。【症例】4歳男児。生後4か月からの体重増加不良、多呼吸と陥没呼吸を契機に、生後8か月時にALCAPAの診断に至った。初診時、胸部XpにてCTR74%、心臓超音波検査では左冠動脈の肺動脈への盗血所見を確認、また左室は著明に拡大し、左室駆出率は20%以下であった。心臓カテーテル検査では発達した側副血行路を確認したが、左冠動脈起始部から大動脈弁輪までの距離が14.0mmと遠く、左冠動脈移植術は困難と判断し肺動脈側左冠動脈開口部パッチ閉鎖術を施行した。術後1日で抜管し、3日で一般病棟に移床と術後経過は良好であった。呼吸障害などの臨床症状は著明に改善したが、左室収縮能は不変であった。術後32日に退院となった。術後1年が経過した頃より胸部Xp上CTRは52%となり、左室駆出率は60%まで改善した。術後3年で行った心臓カテーテル検査では、左冠動脈の肺動脈への盗血は消失し、右冠動脈から末梢の側副血行路を介して、左冠動脈領域への血流が確保されていることが確認できた。【考察・結語】ALCAPAに対する術式として、単冠動脈系再建術は側副血行路が発達した成人例に行われていた術式であるが、長期的予後不良のため、現在は二冠動脈系再建術が主となっている。本症例においては、左冠動脈起始部から大動脈移植部への距離が遠いこと、手術侵襲に耐えられないことを考慮し二冠動脈系再建術は困難と判断した。肺動脈側パッチ閉鎖術は単冠動脈となるが、術後2年が経過した現時点で良好な経過をたどっており、本症例のように側副血行路が発達した乳児例に対しては低侵襲で有効な外科的治療になり得ると考えられた。