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[II-OR29-03] 新規エンドセリン受容体拮抗薬マシテンタンの小児循環器分野での使用経験 ~その効果と注意点~
キーワード:肺高血圧, マシテンタン, 副作用
【はじめに】 マシテンタンは2年前に本邦でも使用可能になった現在最も新しいエンドセリン受容体拮抗薬(ERA)である。肺血管拡張薬で初めて大規模研究での死亡・悪化イベント低減効果が実証されており、その副作用の少なさや容量調整が不要であることなどから、成人の肺高血圧分野では盛んに使用されているが、小児循環器分野では散発的な使用の症例報告にとどまり、まとまった使用経験の報告は少ない。【目的・方法】 当科でマシテンタンを使用した例について、その効果と問題点を検討した。対象は2015年7月(本剤発売開始)~2017年1月までに本剤を使用開始した16例。年齢は8ヶ月~38歳。全例に投与前後でカテーテル検査を行い、血行動態の変化や副作用について検討した。13例は既存のERAからの切り替えで、3例は新規導入であった。7例がIPAH(小児および小児期からのキャリーオーバー例)、9例が先天性心疾患に伴うPAH(CHD-PAH)であった。【結果】 16例中13例で臨床的な改善効果が得られ、Rpは平均14.1から11.2U・m2(p<0.05)へ低下が見られた一方、IPAHの2例では悪化ないし改善が得られなかった。4例(25%)で副作用が生じ、1例は重篤な腎障害で投与中止した。他は経過観察・減薬で対応可能であった肝機能障害・正球性貧血・一過性のBNP上昇・SpO2低下(換気血流不均衡の悪化)であった。新規導入例では全例血行動態の改善を得たが、ボセンタンからの変更では若干の改善、アンブリセンタンからの変更2例では改善がはっきりせず、PGI2系薬剤の治療強化を要した。【結語】 マシテンタンは概ね有効かつ副作用も少ないが、気をつけるべき点や副作用も見られる。ボセンタンより強い効果を期待しうる反面、アンブリセンタンからの変更時は注意が必要と考えられた。