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[II-OR29-05] 小児期発症の特発性および遺伝性肺動脈性肺高血圧症の長期生存例の臨床的特徴
キーワード:肺高血圧, 長期生存, epoprostenol
<背景>特発性および遺伝性肺動脈性肺高血圧(i/hPAH)患者において、近年の肺高血圧治療の進歩により、肺移植を行わずに内科管理だけで10年以上の生存できる症例が増えてきた。しかし、この長期生存例における臨床的特徴、治療及び管理について十分な報告はされていない。<目的>i/hPAHで長期生存例における臨床的特徴について検討する。<方法>18歳未満に発症したi/hPAH患者の10年以上生存しえた症例で当院で経過観察中の30例と、死亡または肺移植を行った26例(死亡22例、肺移植4例)における臨床データを後方視的に解析した。<結果>長期生存例は、iPAH 20例、hPAH 10例であり、男女比は15:15、診断時年齢は11歳(3-17歳)、現在の年齢は25歳(16-34歳)で観察期間は14年(10-18年)であった。死亡/肺移植例は、iPAH:hPAHは19:7、男女比は14:12、診断時年齢は9歳(3-17歳)と有意差を認めなかった。長期生存例では初診時のNYHA functional classはClass II 12例、Class IIIが18例であった。初回カテーテル検査における肺血行動態では、長期生存例は死亡/肺移植例と比較して、有意差を認めなかった(中央値;平均肺動脈圧63 vs 76 mmHg、肺血管抵抗値19.5 vs 27.4 unitxm2、心係数 2.9 vs 2.4 l/min/m2)。肺血管拡張薬の内服治療のみで管理できたものは9例、残り21例はepoprostenol治療を併用されていた。Epoprostenol治療前後における平均肺動脈圧、肺血管抵抗値、心係数はいずれも統計学的に有意に改善を示したが(平均肺動脈圧63 vs 59 mmHg、肺血管抵抗値19.5 vs 14.5 unitxm2、心係数 2.9 vs 3.5 l/min/m2)、死亡/肺移植症例では改善を認めなかった。経過観察中、8例で心不全入院を必要としたが、3例ではepoprostenolから離脱できた。<結論>小児期発症のi/hPAHの長期生存例では、死亡および肺移植例に比して診断時の重症度に差は認めなかったが、epoprostenol治療への反応性が良好であった。