Free Paper Oral 37 (II-OR37)

[II-OR37-03] 新生児期にStarnes手術を行った重症Ebstein奇形の中長期予後

^○郷 清貴¹, 杉谷 雄一郎¹, 兒玉 祥彦¹, 倉岡 彩子¹, 中村 真¹, 佐川 浩一¹, 石川 司朗¹, 中野 俊秀², 角 秀秋² (1.福岡市立こども病院 循環器科, 2.福岡市立こども病院 心臓血管外科)

Keywords:Ebstein奇形, Starnes手術, Fontan手術

【背景】出生後より呼吸循環不全を呈する重症Ebstein奇形の予後は不良であったが、新生児期にStarnes手術を行うことで救命例が増加している。しかし、中長期的な予後については明らかでないことも多い。【目的】当院で新生児期にStarnes手術を行ったEbstein症例の臨床的特徴と予後を明らかにすること。【方法】2004年-2016年に経験した9症例（現在0歳-12歳）について、後方視的に検討した。【結果】男女比は5：4例、出生週数は平均37.3週（35週-40週）、出生体重は平均2,642g（2,108-3,223g）で、全例胎児診断されていた。Starnes手術時の日齢は平均6.4（1-16日）で、うち4例はcircular shuntによる循環不全のため、日齢0-1にMPA ligationを先行して行った。PAへの順行性血流を認めたのは1例のみで、全例出生後人工換気を要し、PGE1製剤およびカテコラミンを使用していた。TCPC到達例は2例、さらに2例が現在TCPC待機中、3例がGlenn手術を待機している。死亡例は2例で、1例をGlenn手術待機中にRSウイルス感染症で失い、1例をGlenn手術後難治性の不整脈（AT、JET）による心不全で失った。2例とも低出生体重児であり、Starnes術後退院時の心胸郭比が生存例に比し大きかった（死亡例：77.5％ vs 生存例：65.3％）。術後血行動態に影響する不整脈を呈したのは6例で、AVRT、AT、JET、AVB、SSSなど多彩であり、4例が継続的な抗不整脈薬内服を要し、カテーテルアブレーションを2例、術中クライオアブレーションを2例、ペースメーカー植込みを2例に行った。心臓カテーテル検査上、TCPC到達例のCVPは8-11mmHg、TCPC待機中の症例もPAP：6-7mmHgと、比較的良好なFontan/Glenn循環が成立していた。【考察・結論】新生児期にStarnes手術を行った9例中7例が生存しており、今後TCPC到達例が増加することも期待されるが、難治性不整脈を来した症例に対するカテーテル/術中アブレーションの施行など、治療戦略の更なる向上を模索している。