第53回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

胎児心臓病学

一般口演 38 (II-OR38)
胎児心臓病学

2017年7月8日(土) 16:15 〜 17:05 第7会場 (2F 研修交流センター 音楽工房ホール)

座長:河津 由紀子(市立豊中病院 小児科)

16:15 〜 17:05

[II-OR38-02] 先天性心疾患胎児診断の状況と有用性の検討

桃井 伸緒, 青柳 良倫, 遠藤 起生, 林 真理子 (福島県立医科大学 医学部 小児科)

キーワード:胎児心エコー検査, 先天性心疾患, 患者搬送

【背景】胎児心エコー普及のためには、その有用性の提示が重要と考えられる。【目的】胎児診断状況と予後から有用性を明らかにする。【対象】2001~2015年の15年間に胎児心エコー検査を行った319例と、新生児期に心疾患で入院した318例。【結果】胎児心エコー検査を行った319例中216例に心疾患を認め、うち127例が出生後に入院した。入院患者の胎児診断率は20%前後から漸増し60%以上に達し、四腔断面で異常が明らかでない心疾患の診断例も増加しているが、東日本大震災に伴い産科医療が混乱した2011年は29%に低下した。入院症例を胎児診断群128例と非胎児診断群190例に分けると、胎児診断群は非胎児診断群に比し有意に在胎週数が短く(37.7±2.2 vs 38.7±2.5週)、出生体重が小さく(2544±562 vs 2848±509g)、入院時血液ガスPHが低かった(7.26±0.11 vs 7.33±0.14)。一方、入院時血液ガスPH7.0未満の代謝性アシドーシス症例10例中7例は非胎児診断群であり、うち6例は動脈管閉鎖に伴うショックであり4例が死亡した。胎児診断群と非胎児診断群の生存:死亡:院外搬送の割合は、それぞれ、78:15:7 vs 78:10:12で、胎児診断群で死亡が多く院外搬送が少なかったが、有意差はなかった。院外への搬送は、母体搬送、新生児搬送いずれも32例であった。母体搬送は、外科医交代に伴う治療対象の制限や、震災や感染症アウトブレイクによるNICU閉鎖の際に増加したが、全例、自家用車や公共交通機関での移動が可能であった。新生児搬送は、32例中30例が県外搬送で、医師・看護師が同乗した新幹線や防災ヘリによる搬送を要した。【考察】胎児診断の増加は、動脈管閉鎖によるショック症例を減少させる効果のみならず、搬送の安全性を高めるため、遠隔搬送を要する地域では特に有用である。