17:05 〜 17:55
[II-OR39-01] 乳児期早期のQT時間延長増強因子
キーワード:QT, 喫煙, 心電図
目的:生後2か月頃に発生頻度がピークとなる乳幼児突然死(SIDS)のなかにはQT延長症候群による不整脈死が含まれる。一方、平成23年から行われた生後2か月児へのHib、肺炎球菌ワクチンの接種後に突然死の報道が相次いだが、この中にQT延長症候群が含まれていた可能性は否定できない。SIDSを防ぐ一つの方法として新生児期 の心電図スクリーニングが考えられるが、日本では、このための法的、社会的基準は 作成されていない。当院では、予防接種時に未診断のQT延長の乳児が紛れ込んでいる可能性があるため乳児期早期のQスクリーニングを行ってきた。今までのデーターから乳児のQT時間の月齢変化およびSIDSの危険因子である非母乳栄養、喫煙環境との関係を検討し興味深い知見を得たので報告する。方法:当院を受診した1から4か月の健康な乳児536例を対象に、四肢に電極を装着し、心エコー装置の画面に記録される心電図モニターからQT時間を計測し、Bazettの補正式からcorreced QT時間 (QTc)を算出した。家族の喫煙状況と乳児の栄養状況は問診表から得た。結果:QTc は348から456 msec0.5で平均QTcは400±19 msec0.5であった。生後1および2か月のQTc (408±21 and 407±18 msec0.5)は3および4か月(396±18 and 397±15 msec0.5)に比し有意に延長(p < 0.01)していた。突然死のリスクとされるQTc>440msec0.5(Schwartz PJら)は14例(2.61% )に認められ、その86%は1-2か月児であった。生後1および2か月では喫煙が非喫煙に比しQTcは長い傾向にあり、3か月では喫煙群の方が有意に延長(404±13 vs. 390±18 msec0.5, p<0.05) していた。全人工乳栄養の児のQTcは全母乳栄養児に比し有意に延長した(410±20 vs. 402±17 msec0.5, p <0.05)。結語: QTcはScwartzらと同様の月齢変化であった。本研究は”乳児期早期のQT時間は人工乳と喫煙環境下で延長する”ことをはじめて明らかにした。