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[II-P20-06] 離島を抱える鹿児島県での先天性心疾患患児における胎児診断の現状と今後の課題
Keywords:胎児心エコー検査, 先天性心疾患, NICU
【背景】鹿児島県は多数の離島を抱え、南北600kmに及ぶ長大な医療圏を持つ地域である。地理的条件に伴う高次医療機関との搬送や連携に時間を費やすなど諸問題を抱えている。【目的】鹿児島大学病院における先天性心疾患(CHD)児の胎児診断の現状を解析し、胎児心エコー検査の今後の課題を明らかにする。【方法】2012年1月から2016年6月までに当院NICUに入院したCHD児を対象に後方視的に検討した。対象期間を前期(2012-13年)、後期(2014-16年6月)の2群に分類し解析した。また鹿児島県が策定した小児科・産科医療圏を基準に5医療圏に分類し比較、検討した。【結果】対象症例は122例(前期59例、後期63例)であった。胎児診断は72例(59%)であった。胎児診断率は、前期50.8%、後期66.7%であり後期群で増加傾向にあったが、有意差は認めなかった(p=0.076)。医療圏別の胎児診断率は、鹿児島市を含む薩摩医療圏が、他の4医療圏に比べ有意に高値であった(薩摩71.2%、姶良伊佐36.8%、北薩28.6%、大隈46.2%、奄美・熊毛54.5%、p=0.018)。各医療圏の出生1,000あたりの産科医師数、分娩施設数との間に関連はなかった。【考案】本県の胎児診断率は、既に報告されている他の自治体のものと比べても高い水準にあり、胎児心臓スクリーニング(レベル1)、胎児心精査(レベル2)が、適切に実施されていることが考えられた。一方、医療圏別では薩摩医療圏と他の医療圏との胎児診断率の地域差が明らかとなった。本県全体の産科医の数は減少傾向にあり、離島を含む都市部から離れた地域に十分な産科医を確保するのは困難な状況にある。地域と人材の格差を解消するため、産科医だけでなく各医療圏に従事する医療技師のスクリーニング技術の向上を図り、また遠隔地の医療関係者と効率的に連携できるインフラ整備が必要である。CHDの胎児診断率をより向上させるためには、地域間の医療格差の改善が必要と考えられた。