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[II-P28-01] 大動脈壁の再生を目的とした細胞による前処理を必要としないハイブリッド経編パッチの新規開発
Keywords:小児心臓手術, 手術材料, 組織再生
【目的】血管壁の再生治療において合成ポリマーや生体材料による足場材に様々な細胞播種を組み合わせるtissue engineering法が試みられて来たが様々な解決課題がある。今回我々は実用化をゴールとし、既存品と同等の力学的特性、手術操作性、そして良好な血管壁再生能を有する細胞前処理を必要としない簡便な汎用性パッチ材開発に着手した。【方法】本開発品(OFTパッチ)は、生分解性糸(ポリ乳酸:PLA)と非吸収性糸(ポリエチレンテレフタレート:PET)を組み合わせた3D構造経編生地をグルタルアルデヒド架橋ゼラチンで無孔処理を施したシートである。本開発品の力学的特性を既存の延伸ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)パッチ、ウシ心のう膜パッチと比較した。また、OFTパッチをイヌ下行大動脈血管壁に作製した欠損部に補填埋植した。6か月後に埋植部を摘出し、肉眼的及び病理組織学的に評価した。【成績】力学的特性(引張強度、縫合糸保持強度)は既存のパッチと同等であった。PTFEで顕著である針穴からの漏出量は、OFTパッチでは有意に軽度であった。手術操作性に問題はなく、埋植6か月後の摘出組織の肉眼的観察では、OFTパッチ内腔側は平滑な新生内膜様組織に覆われていた。組織学的所見では、パッチ線維が自己血管の弾性線維と連続し、その内外に層状の平滑筋層と膠原線維からなる良好な組織修復が観察された。パッチに対する炎症反応は軽度で、カルシウムの沈着や瘤、狭窄は認められなかった。特筆すべきは、ゼラチンの消失した部位では、パッチ線維間隙を通し新生血管を伴う組織のブリッジングが認められた。【結論】OFTパッチは、既存品に劣らない力学的特性と手術操作性を有し、埋植前の細胞の播種がなくとも大動脈壁欠損部に生存可能な組織再生を誘導した。伸長可能なデザインのPET部分の挙動を長期観察により評価したい。