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[II-P29-05] 新生児期には指摘し得なかった右肺動脈欠損の一例
Keywords:肺動脈欠損, 肺萎縮, 新生児期
症例】1歳3カ月女児。【現病歴】自宅でおもちゃで遊んでいる時に激しくむせ込んだ。その後より発熱、咳嗽の増悪を認め、当院救急外来を受診した。前胸部に湿性ラ音を聴取、吸入を実施したが陥没呼吸が改善しないため、肺炎の診断で入院した。【出生歴】在胎38週3日2860g、頭位経腟分娩で当院で出生。Apgarスコアは1分値8点、5分値8点。生後2時間頃より酸素飽和度の低下を認め、新生児一過性多呼吸の診断で当院NICUに入院。日齢4まで酸素投与を要したが、合併症なく日齢8に退院した。入院中の胸部X線では異常を指摘されなかった。【入院後経過】入院時の胸部X線で縦隔の右方偏位を認めた。現病歴と合わせて、異物誤嚥を疑い胸部CTを実施した。気管気管支に異物は認めなかった。後に実施した造影CTと合わせ、肺炎、右肺動脈欠損と診断した。抗菌薬投与を行い、呼吸状態悪化することなく改善、退院した。【考察】肺動脈欠損は稀な疾患で、心奇形に伴うものと単独のものに分けられる。左肺動脈欠損はファロー四徴症などの先天性心疾患に伴うものが多い一方、右肺動脈欠損は無症状で、本症例のように呼吸器感染症罹患時などに偶発的に発見されることが多い。一般に予後良好とされるが、肺高血圧を合併する症例は予後不良であることがわかっている。胸部X線で患側肺低形成と縦隔偏位が特徴的とされるが、自然歴を示した報告はなく、いつ肺萎縮が進行するかはわかっていない。成人期に患側肺の萎縮が徐々に進行した症例の報告はあるが、本症例のように新生児期より経過観察を行った報告はない。縦隔偏位を認めた場合、過去に正常胸部X線写真の所見が正常でも、肺動脈欠損とそれに伴う肺萎縮の可能性を念頭に置く必要がある。