第53回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

会長賞選別講演

会長賞選別講演 (II-PAL)

2017年7月8日(土) 08:30 〜 09:20 第4会場 (1F 展示イベントホール Room 4)

座長:坂本 喜三郎(静岡県立こども病院)
座長:安河内 聰(長野県立こども病院 循環器小児科)

08:30 〜 09:20

[II-PAL-01] 遺伝性出血性末梢血管拡張症における遺伝子変異と臨床像

千田 礼子1,2, 新谷 正樹2, 島田 光世2, 古谷 喜幸2, 稲井 慶2, 松岡 留美子2, 朴 仁三2, 中西 敏雄2 (1.陸上自衛隊幹部学校, 2.東京女子医科大学 循環器小児科)

キーワード:遺伝性出血性末梢血管拡張症, 遺伝子変異, 臨床像

【背景】遺伝性出血性末梢血管拡張症(hereditary hemorrhagic telangiectasia: HHT)は、反復性の鼻出血、皮膚粘膜の末梢血管拡張、内臓の動静脈奇形、常染色体優性遺伝を特徴とする血管形成異常である。特に小児期には非特異的な鼻出血が認められる機会は非常に多く、さらにHHTに関する認知度が十分とは言えないことから、HHTの早期診断および鑑別は時に困難となる。また、2016年までにENG、ACVRL1、SMAD4、GDF2の4遺伝子が疾患原因遺伝子として同定されているが、これらの遺伝子変異と臨床像との関係に関する報告は少ない。【対象と方法】1990年以降、臨床的にHHTが疑われ、東京女子医大に原因遺伝子検索の依頼があった27症例のうち、Curacaoの診断基準でprobable以上、もしくはunlikelyで原因遺伝子変異を認めた計12症例について、各々の臨床像を後方視的に調査した。【結果】4症例(33%)でENG変異を、4症例(33%)でALK1変異を、1症例(8%)でGDF2変異を検出し、残る3症例(非変異群、25%)では原因遺伝子変異を認めなかった。肺動静脈婁を5症例(42%:ENG変異群1例、ALK1変異群2例、GDF2変異群1例、非変異群1例)で、肺高血圧を1症例(8%:ALK1変異群)で認めた。初発症状は鼻出血、偶然撮影された胸部X線での異常陰影、易疲労感、多呼吸、胸痛等と多彩であった。重篤な合併症として、脳梗塞、脳膿瘍、腎膿瘍、肺膿瘍、脾膿瘍が認められた。また、肺動静脈婁に対する侵襲的治療を要したのは4症例(33%:ENG変異群1例、ALK1変異群2例、GDF2変異群1例、非変異群なし)で、原因遺伝子変異を有する群で多い傾向があった。【結語】HHT患者における原因遺伝子検索は、家系内の潜在的HHT患者の検出、早期の治療介入による重篤な合併症の発生予防に有用である可能性が示唆される。さらに症例を蓄積する必要がある。