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[II-PAL-02] V407I-BMP10変異は心筋の分化および増殖を障害し、左室心筋緻密化障害の原因となるかもしれない
Keywords:左室心筋緻密化障害, BMP10, BMPR
【背景】左室心筋緻密化障害 (LVNC)は左室心筋緻密層の菲薄化と非緻密層の高度な肉柱形成および深い肉柱間の間隙を形態的特徴としスポンジ状の心筋を呈する心筋症である。原因としては心筋細胞の発達過程における分化あるいは増殖の障害が関与していると考えられている。Bone Morphogenic Protein 10 (BMP10)はTGF-βファミリーに属す増殖因子であり、心筋細胞などの発達に関与する重要な蛋白である。本研究の目的はp.V407I-BMP10 (v.BMP10) の心筋細胞の発達過程における機能を明らかにすることである。【方法と結果】230名のLVNC患者とその家族をスクリーニングし、ミスセンス変異であるc.1219G>A (p.V407I-BMP10) を1家系内の2名の患者で発見した。これはMAF 0.0014のa single nucleotide polymorphism (SNP) として報告されていたが、in silico解析では6/7のソフトウェア(SIFT、Polyphen2、PROVEAN、CADDなど)で病的変異という結果であった。変異はBMP10受容体であるBMPR1aやBMPR2と相互作用する部位である、BMP10タンパクのβドメインの2nd fingertipの先端付近に位置していた。v.BMP10は野生型BMP10 (WT)と同様に2量体や多量体を形成しえた。免疫沈降を用いたBMP10およびその受容体(BMPR1aやBMPR2)との親和性解析ではv.BMP10はWTと比較して、親和性が低下していた。H9C2細胞を用いた心筋分化および増殖実験では、WTと比較して、v.BMP10においては分化が不十分な傾向があり、細胞増殖能の低下を認めた。【結論】v.BMP10はBMPR1aおよびBMPR2に対する親和性が低く、これは変異特異的な影響と考えられた。そのことにより、心筋の分化、増殖が抑制され、LVNCの表現型をもたらしている可能性が示唆された。