第53回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

会長賞選別講演

会長賞選別講演 (II-PAL)

2017年7月8日(土) 08:30 〜 09:20 第4会場 (1F 展示イベントホール Room 4)

座長:坂本 喜三郎(静岡県立こども病院)
座長:安河内 聰(長野県立こども病院 循環器小児科)

08:30 〜 09:20

[II-PAL-04] 光緩衝断層法(OCT)を用いた川崎病遠隔期冠動脈病変におけるVasa Vasorumの検討

垣本 信幸1, 武内 崇1, 樽谷 玲2, 猪野 靖2, 田中 篤2, 久保 隆史2, 末永 智浩1, 立花 伸也1, 渋田 昌一3, 赤坂 隆史2, 鈴木 啓之1 (1.和歌山県立医科大学 小児科, 2.和歌山県立医科大学 循環器内科, 3.紀南病院 小児科)

キーワード:川崎病, OCT, vasa vasorum

【背景・目的】近年、光緩衝断層法(OCT)を用いた検討で、アテローム性動脈硬化の進行,不安定化に 冠動脈外膜に存在する血管栄養血管であるvasa vasorum(VV)の増生や、VVからの新生血管が重要な役割を担っていると報告されている。一方で、川崎病(KD)冠動脈病変(CAL)の遠隔期に、VVに関して検討した報告は存在しない。今回我々は、OCTを用いて、CAL症例の遠隔期におけるVVの関与を検討した。【対象・方法】対象は、急性期に何れかの枝にCALを合併し、フォローアップ冠動脈造影(CAG)中にOCTを施行した21症例。遠隔期にCAG上、異常所見を認めない冠動脈枝を抽出し、急性期のCAGでCALを認め、その後退縮しCAG上正常化した冠動脈枝群(regression群)と、急性期にもCALを認めなかった冠動脈枝群(non CAL群)に分類した。OCT上、regression群で急性期にCALを認めた部位のVVの個数および冠動脈内膜厚を計測し、non CAL群の各枝の近位部のVVの個数および冠動脈内膜厚と比較検討を行った。【結果】KD発症からOCT施行までの経過期間の中央値は16年5か月。OCTを施行し得た冠動脈51枝中、遠隔期にCAGでCALを認めない枝は34枝。その中でregression群は16枝、non CAL群は18枝。VVの個数はregression群がnon CAL群と比較して有意に多かった(p=0.0235)。また、内膜厚もregression群で有意に大きかった(中央値478μm vs 355μm, p=0.0058)が、non CAL群においても成人の正常上限とされる400μm以上の内膜肥厚を有する枝を7/18(39%)に認めた。【まとめ】CALの退縮、内膜肥厚にVVが関与していることが示唆された。また、急性期にCAG上CALを認めない冠動脈においても、遠隔期に内膜肥厚が残存することがあり、長期の経過観察が重要である。