第53回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム 5 (II-S05)
周産期領域のチーム医療

2017年7月8日(土) 10:10 〜 11:40 第1会場 (1F 展示イベントホール Room 1)

座長:田中 靖彦(静岡県立こども病院循環器科)
座長:西口 富三(静岡県立こども病院産科)

10:10 〜 11:40

[II-S05-01] 地域における胎児診断への取り組み(胎児診断例の周産期管理)

田中 利隆, 山本 祐華, 正岡 駿, 熊谷 麻子, 助川 幸, 西澤 しほり, 村瀬 佳子, 田中 里美, 矢田 昌太郎, 金田 容秀, 三橋 直樹 (順天堂大学 医学部附属 静岡病院 産婦人科)

キーワード:胎児診断, 先天性心疾患, 地域医療

【背景】近年胎児診断によって、先天性心疾患の多くが出生前診断されるようになり、出生後の新生児を救命できるようになった。その一方で、重症心疾患と胎児診断された家族に対して、出生前、出生後、さらに小児期まで継続した支援の必要性が示唆されている。静岡県東部地域には出生後に心臓手術ができる医療機関がないため、継続的な支援には地域外の医療機関との連携が必要不可欠である。当院では産科医が胎児診断を行っており、重症心疾患と胎児診断された症例に対して、その後の評価と十分なカウンセリングを行い、その情報を静岡県立こども病院と共有・連携し、周産期管理を行っている。【対象】2015年1月~2016年12月の2年間で当院から静岡県立こども病院に紹介した重症心疾患症例は8例で染色体異常は0例であった。大血管転位症2例、Ebstein奇形1例、三尖弁異形成1例、純型肺動脈閉鎖1例、肺動脈狭窄1例、重症大動脈弁狭窄1例、右側相同1例であった。この中の1例を提示する。【症例】30歳、2経妊1経産、妊娠28週に羊水過多、胎児腹水および心奇形が疑われ当院に紹介された。超音波上、重症大動脈弁狭窄に伴う胎児水腫と診断した。静岡県立こども病院医師に胎児の詳細を伝え、現時点で転院しても治療が困難なことから、家族にカウンセリングを行い、当院で入院管理とした。羊水過多症に対して羊水除去を施行し、胎児心拍モニタリングによる胎児well beingと超音波による心機能の評価を継続し経過観察した。大動脈の順行性血流が確認され、胎児水腫が軽快し、新生児治療が可能と考えられた35週に転院搬送した。36週2日に帝王切開により出生し、出生直後に心房中隔欠損作成、肺動脈絞扼術を行い、その後Norwood手術を行った。【結語】重症心疾患と胎児診断された場合であっても、その後の正確な評価と、他医療機関との連携が可能であれば、家族の負担が少ない近隣の医療機関で管理することも選択肢の1つと考えられた。