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[II-S05-02] 胎児診断後の産科合併症への対応
キーワード:産科合併症, 胎児診断, 子宮内胎児発育不全
胎児心臓超音波スクリーニングが普及することにより、より多くの胎児心疾患が出生前に形態診断・血行動態診断がなされるようになった。産婦人科診療ガイドライン産科編2014にも胎児超音波検査についての項目があり、広義の出生前診断の一つであり、全妊婦を対象とした標準検査とは明確に区別されている。胎児心疾患が妊娠中に悪化することは一部の疾患を除くとまれである。このため産科医師の役割は、出生後の新生児治療にスムーズに移行するために、より安全により良い状態で分娩を終了させる役割を担っている。胎児心疾患が出生前診断されるのは妊娠中期以降であり、その後に起こり得る産科合併症としては母体側要因では切迫早産・前期破水・前置胎盤などの胎盤位置異常・妊娠高血圧症候群(hypertensive disorders of pregnancy)・常位胎盤早期剥離、胎児側要因としては子宮内胎児発育不全(FGR)などがあげられる。胎児心疾患が母体側の産科合併症を起こしやすいという報告はないが、FGRの頻度が高まることがいくつかの報告で知られている。当院で2014年1月からの3年間、胎児心疾患症例は181例あり、このうち早産は9例(5.0%)、FGRは23例(12.7%)でありFGR全体の発生率(8‐10%)よりやや高い頻度であった。胎児心疾患の分娩時期・分娩週数は通常の産科適応での対応で良く、自然陣痛を待機するのが一般的である。出生後早期に治療介入が必要な疾患に関しては個別に小児循環器医・小児心臓外科医との連携のもと、計画分娩も考慮される。胎児心疾患があることにより、通常の産科管理を拡大解釈して対応することも時として必要である。それは、産科医師の最終目標として、産科合併症に対応しつつ、より出生体重を大きく、より正期産に持ち込める管理をすることが必要なためである。それが児の心臓以外の合併症を減らし、外科的介入を容易にする手助けになると考える。